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天声人語

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2012年8月2日(木)付

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 水俣病の研究に尽くし、被害患者と向き合ってきた医師の原田正純さんは生前、「見てしまった責任」をよく口にした。青年医師の頃に現地に入り、人間らしい尊厳を奪われた被害者を目の当たりにする▼病気のひどさはむろんだが、貧困や差別に衝撃を受けた。救済されるべき人たちは、貧乏の底で、雨戸を閉めて隠れるように生きていた。以来、この6月に77歳で亡くなるまで、水俣に一生をかけてきた。これほど純粋で胸に迫る「責任」の果たし方があろうか▼ひるがえってこの国である。多くの反発があるなか、政府は水俣病被害者救済法に基づく救済策の申請を7月末で締め切った。加害責任と救済責任を過去のものにするために、救済の「最終列車」を仕立てて、申請者を駆け込ませた印象だ▼だが、乗れなかった人も多いはずだという。被害の広がりは今もはっきりしない。なのに、地域や年齢で対象者を限った。さらに偏見への心配から申請をためらう人がいるからだ▼以前は集落ぐるみの「患者隠し」もあったと聞く。高齢の元漁師が本紙に語るところでは、「最近まで、うちんとこから水俣病を出すわけにはいかん、という空気があった。隠さんばいかんじゃった」。今回、悩んだ末に窓口に来た人が少なくない▼原田さんは亡くなる前に、「国などは『もう終わり、もうよかろう』という態度だが、終わらんよ」と言っていた。責任をほうり出して幕引きに走る図に、原発事故の今と将来を重ねていたに違いない。


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