HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 48967 Content-Type: text/html ETag: "14cfc61-379a-6bfbaf00" Cache-Control: max-age=1 Expires: Wed, 01 Aug 2012 23:21:03 GMT Date: Wed, 01 Aug 2012 23:21:02 GMT Connection: close
大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
|
官邸や国会の壁を隔てて対峙(たいじ)してきた政治と市民の間に、小さな窓が開いたように思う。衆院議員会館で一昨日夕、開かれた対話の場のことだ。原発再[記事全文]
紛争や抗争による犠牲者は、世界で年間74万人にのぼるとされる。そこで武器の国際取引の規制を通じ、犠牲者を減らしていく「武器貿易条約」の交渉が、国連で行われた。期限内にま[記事全文]
官邸や国会の壁を隔てて対峙(たいじ)してきた政治と市民の間に、小さな窓が開いたように思う。
衆院議員会館で一昨日夕、開かれた対話の場のことだ。
原発再稼働をめぐり、首相官邸前の抗議行動や国会包囲を主催する市民グループと、菅直人前首相ら超党派の脱原発派国会議員、計20人余りが参加した。
労組などに組織されない市民と、政治の壁がいかに厚かったか。象徴的な場面があった。
市民側は、野田首相と直接話し合えるよう、議員らに助力を求めた。民主党の平岡秀夫元法相が「みなさんが何かの組織の代表なら会える」というと、批判が相次いだ。
「私たちは組織じゃない。そんな状況自体、間接民主主義が機能していない」
経団連や連合――つまり票も金も動かせる組織の代表なら、首相に会える。なのに組織されない抗議は何万に膨らんでも、直接伝えられないのか。
菅前首相は「話を聞くのはやぶさかではない」という野田首相の言葉を伝えた。早急に実現し、民主主義への絶望感を広げないようにすべきだ。
不信は深い。同じ脱原発派でも、一刻も早くと求める市民側と、一定の時間が要ると考える議員には溝がある。市民が議員を詰問する場面もあった。
それでも対話の糸口は見えた。議員と市民の双方から、大切な指摘が聞かれた。
まず、民主党の辻元清美氏。
「日本を生まれ変わらせるエネルギーが官邸前にある。一緒に変えていく方向に、政治が動き出せるかどうかだ。いままで『要求する側』と『される側』だったが、一緒に悩み苦しまないと、問題を解決できない」
原発がなくても困らない社会をどうつくるか。ともに悩む関係を築けるか否かが先行きをわける。不信と分断に陥るのを避け、信頼と対話につなげられるかの瀬戸際だ。
「エネルギーシフトパレード」呼びかけ人の鈴木幸一さんは取材にこう語った。「首相の指導力で突破せよという声もあるが、民主主義の基本はスーパーマンに頼らないこと。物事を変えるのは『民意』だ」
民意が熟し、実るかぎは「場づくり」だ。一例として、抗議行動の際、官邸前を車道まで開放すれば、市民と議員が対話しやすくなると提案する。
2人の思いに共感する。
敵だ味方だと壁をつくらず、対話しよう。
自民党などの原発推進派も臆せずに、抗議の市民と同じテーブルに着いてはどうか。
紛争や抗争による犠牲者は、世界で年間74万人にのぼるとされる。そこで武器の国際取引の規制を通じ、犠牲者を減らしていく「武器貿易条約」の交渉が、国連で行われた。
期限内にまとまらず、交渉は仕切り直しになったが、規制は急務である。
条約が結ばれれば、一般的な武器を幅広く規制する初の国際約束となる。紛争に苦しむアフリカや、麻薬がらみの組織犯罪が多い南米諸国が熱心に取り組み、武器輸出大国の米国や中国、ロシアなどは慎重だった。
約1カ月の交渉の最終盤で示された議長案では、戦車や戦闘機、ミサイルなどに加え、「小型武器・軽兵器」が規制品目に入った。銃や携帯式ミサイル発射装置といったものだ。
国際人道法・人権法などに違反する取引や、虐殺や人道に対する罪などを助長する目的での移転を禁じる。各国に管理体制の強化や、取引についての報告書の提出も求めている。
一方で、参加国を増やすため、慎重派の意見も反映された。推進国側は「人を殺すのは弾薬」として、弾薬の規制を重視したが、米国の反対で規制品目に入れなかった。
他にもさまざまな「抜け道」がある。具体的な武器の規制リストづくりは各国に委ねられ、「防衛協力」による武器移転も規制対象外となった。
それでも米国が「まだ時間が必要」と言いだし、ロシアなども同調した結果、採択は先送りされた。
ここは交渉再開までの時間を逆手にとって、より強い内容を目指す好機と考えたい。
米国では、大きな政治力を持つ「全米ライフル協会」が反対運動を展開した。上院議員51人が連名で条約に懸念を示した。
だが、条約は違法な国際取引に関する規制で、国内での合法取引は対象ではない。米政府は国民にしっかりと説明し、理解を得るよう努めるべきだ。
秋の国連総会では、議長が交渉内容を報告する。強い内容の条約案を総会で採択しようとの動きが出る可能性もある。実効性の高い条約づくりへの議論を深める場としたい。
米中ロは、国連安全保障理事会の常任理事国である。紛争を防ぎ、犠牲者を減らす試みでは、特別の責任があることを自覚する必要がある。
武器輸出3原則を持ち、輸出管理も厳格な日本は、説得力を持って条約を推進できる立場にある。英国などと協力して旗振り役をになってきたが、さらに力を発揮してほしい。