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2012年8月1日(水)付

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電力の選択―単なる先送りはだめだ

脱原発依存に向けた新しいエネルギー政策を決める「国民的議論」が、終盤を迎えている。パブリックコメントの募集は8月12日までだが、全国11カ所での意見聴取会はきょうの福島[記事全文]

仮のまち―安心の青写真を早く

原発事故から避難している福島県浜通りの4町で、町外コミュニティー(仮のまち)をめぐる議論が本格化してきた。浪江町と大熊町は7月、町民アンケートの結果をまとめた。富岡町も[記事全文]

電力の選択―単なる先送りはだめだ

 脱原発依存に向けた新しいエネルギー政策を決める「国民的議論」が、終盤を迎えている。

 パブリックコメントの募集は8月12日までだが、全国11カ所での意見聴取会はきょうの福島を含め残り3カ所。4〜5日には東京都内で、熟議型の世論調査の討論会がある。

 政府は「意見を聞いた」というアリバイづくりにせず、これらの議論をどう受け止め、生かすのか、成果と方針を国民に説明する必要がある。

 議論の手法にはそれぞれ特徴があり、三つの選択肢について単純な集計結果を示すだけでは不十分だ。

 むしろ、参加者が何に優先順位をおいているのか、ほかの選択肢のどこに不安や課題を感じているのかといった点を、ていねいに分析してもらいたい。

 とくに「討論型世論調査」は初めての試みだ。言いっぱなしでなく、互いの意見の違いを確認しながら議論した結果、どう変化するのか。国民にどんな情報提供やコミュニケーションが必要なのか。政治が学ぶべき点は多いはずだ。

 私たちは早期に原発をゼロにする案を支持しているが、実現の仕方には課題があるのも事実である。必ずしも3案の中身を固定的に考える必要があるわけではないだろう。

 最終的に政策を決めるのは、野田政権の責任だ。

 政権としての意志を示す際、国民的議論の過程で集約された疑問点をどう解決していくか、合理的な説明と対策が提示できるようにしておかなければならない。

 ところが、ここにきて、8月中に予定されていた決定を先送りする案が、政権内で取りざたされている。

 確かに、議論の期間が短く、意見聴取会などの運営面でも不備が目立ち、「十分に意見を言う場がない」との不満はある。原発の維持を求める経済界には選択肢そのものへの疑問や反発がある。

 しかし、原発事故から間もなく1年5カ月。原発の減らし方やスピードについて、具体的な方針を示すべきときだ。そのうえで検討不足と判断した点があれば、論点や条件を明確にしたうえで議論を継続すればいい。

 方向性が定まらなければ、人もモノもカネも動けず、代替エネルギーの開発や省エネ投資も進まない。

 9月に控える民主党代表選や政局を気にしての先送りは論外だ。野田首相が向かいあうべきなのは、永田町ではなく国民である。

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仮のまち―安心の青写真を早く

 原発事故から避難している福島県浜通りの4町で、町外コミュニティー(仮のまち)をめぐる議論が本格化してきた。

 浪江町と大熊町は7月、町民アンケートの結果をまとめた。富岡町も調査中。双葉町は近く町民の声を聞く会議を始める。

 どこにいつごろ、どんな規模のまちを造るのか。大まかな構想を住民に早く示すべきだ。

 まず、なぜ仮のまちが要るのかと思う人もいるだろうか。

 原発事故の周辺の地域では、地元に住みつつ家や街をたてなおすわけにはいかない。

 仮設住宅の入居期間は3年。多少延長はあったとしても、地元に帰れる状態になるまで何年か腰を落ち着ける場所が要る。

 いずれ帰れるようになったとき、帰る人がいなくては故郷をたてなおせない。ある程度の人数がまとまって住み、町民のつながりを保てる場が要るのだ。

 ただ、あまり時間はかけられない。事故から1年5カ月近くがたち、先の見えない生活は心と体にじわじわ響いている。

 県の調べでは、住民の2割が気分の落ち込みや不安を抱える。酒が増えた。眠れなくて薬を飲んでいる。親の介護が必要になった。家族や近所がばらばらになって、つらい。仮設住宅を回るとそんな声を聞く。

 だれもが先の見通しをほしがっている。どの町でも「帰町まで待てる期間」はあと3〜5年までとの答えが多い。早く落ち着きたい気持ちの表れだろう。

 時がたつにつれ、避難先で新しい生活が根を張る。あきらめが強くなる。大熊では「故郷には戻らない」という人が、1年で1割から4割に増えた。

 「戻らない」「仮のまちには行かない」と自分の意思で決めるならよいが、時間に強いられてあきらめる人を出してはならない。

 避難者は仮のまちをイメージできず、移住すべきか迷っている。浪江では過半数が「わからない」「判断がつかない」と答え、はっきり「住みたい」と答えた人は2割にとどまった。

 これまで仮のまちは、町まるごと他の市に引っ越す大規模ニュータウンのイメージで語られてきた。しかし、候補にあがった地域にはこれへの抵抗感がある。避難者2万人が暮らすいわき市で、道路や病院の混雑などがおきているからだ。

 ならば、集落単位などでコンパクトな「まち」をあちこちに造ってはどうだろう。地元にとけ込みやすいし、完成も早い。

 4町と受け入れ先の間に立つ国と県の役割は重い。避難者らを早く落ち着かせてあげたい。

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