HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 30 Jul 2012 22:21:13 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:米乱射事件 消えた「銃規制」の声:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

米乱射事件 消えた「銃規制」の声

 米コロラド州で起きた銃乱射事件は、国際社会に大きな衝撃を与えているが、大統領選挙のさなかにあって、一向に争点化する気配を見せていない。銃規制をなぜ議論しないのか。

 コロラド州オーロラの映画館で起きた無差別乱射事件は、六歳の少女を含む観客十二人が死亡、約六十人が負傷する惨劇だった。

 犯人のホームズ容疑者は、自動小銃を含む三丁の銃を合法的に購入、銃弾六千発はネットで買い入れていた。自室に爆弾を仕掛け捜査の攪乱(かくらん)を狙った疑いもあり周到な計画を練っていたとみられる。

 オバマ大統領は選挙戦を中断、現地入りし遺族へ弔意を表明、共和党ロムニー候補も哀悼の意を示したが、銃規制の問題が一向に争点化しないことには驚かされる。

 米国の銃規制の歴史は長いが、一九九〇年代には一定の前進を見せた。レーガン大統領狙撃事件で負傷したブレイディ元補佐官の活動もあり、九四年には銃購入の際の犯歴確認などを義務化した「ブレイディ法」が施行。高校留学生、服部剛丈君の射殺事件もあって日本でも大きな関心を集めた。

 ブッシュ前政権下でのブレイディ法失効後、銃規制を大きく後退させたのが二〇〇八年の最高裁判決だ。首都ワシントンの銃規制法の違憲性をめぐり争われた訴訟で、最高裁は憲法修正第二条で定める銃所持の権利を国民の権利と初めて認め規制法の一部を違憲とした。勢いづいた保守勢力は、全米ライフル協会(NRA)を中心に全米各州で銃規制法の緩和を求める訴訟を展開している。

 米国社会に根差す自衛、自助精神は、事件後、コロラド州で銃の購入者が急増していることにも表れているが、一方で米国には銃管理をめぐる公正なルール作りを模索してきた伝統もある。銃規制団体「ブレイディ・センター」では、教育現場での所持禁止や、犯歴がある者などへの販売規制など、現行法の枠内での規制強化の取り組みを続けている。

 最高裁判決は、銃規制自体は認めており、連邦裁で争われている訴訟では既存の規制法の大半が合法と判断されている。

 オバマ氏もロムニー氏も、それぞれ上院議員時代、州知事時代に銃規制を訴えていた。全国に三億丁の銃が溢(あふ)れ、ネットで大量の銃弾が買える現状で相次ぐ惨劇を繰り返さないためにも、選挙の戦術的思惑を超えた大きな議論の復活を望みたい。

 

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