HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 30 Jul 2012 23:21:19 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 美しい不知火(しらぬい)海の前に、東京ドーム十四個分もの…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 美しい不知火(しらぬい)海の前に、東京ドーム十四個分もの広さの埋め立て地が広がっている。足元に、有機水銀が混ざった大量のヘドロと三千本のドラム缶に詰められた「汚染魚」が眠っているとは想像しにくい▼近くの岬に立つ市の水俣病資料館で、胎児性水俣病患者の永本賢二さん(52)が「語り部」として話をしていた。三歳まで目が見えず、歩けたのは五歳。いつも母や姉におぶわれていたという▼今も足や手がしびれ、立っているのがやっとだ。「治ることはありません。痛み止めや鍼(はり)でごまかしてる。元気な間に稼ぎたい」。筆舌に尽くしがたい体験を時にユーモアを交ぜて語る姿に逆に励まされた▼水俣病の公式確認から五十六年。国や加害企業のチッソは、「幕引き」を急ごうとしている。国の基準で認められなかった被害者を救済する特別措置法に基づく申請は、きょうが締め切りだ▼被害を矮小(わいしょう)化したいのだろう。政府は対象地域や年齢に不合理な線引きをした。差別や偏見を恐れて、ためらう人がまだ多いのに期限の延長などには応じないという▼資料館で販売されていたポストカードの一文に胸を打たれた。<知らないのは罪/知ったかぶりはもっと罪/嘘を言うのはもっと もっと罪>。語り部をしていた認定患者の故・杉本栄子さんの言葉だ。原発事故を経験した今、一層、普遍的な力を持つ言葉になった。

 

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