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領土問題をめぐる立場の隔たりは大きいが、解決は互いに豊かな利益をもたらす。そのことをロシア側に納得させ、打開への道を見いだしたい。日ロ外相会談がロシアの保養地ソチであり[記事全文]
自営業者やパート労働者らが加入する国民年金で、保険料の未納がまた増えた。昨年度の納付率は58.6%で、4年続けて過去最低を更新した。サラリーマンやその配偶者らを含む公的[記事全文]
領土問題をめぐる立場の隔たりは大きいが、解決は互いに豊かな利益をもたらす。そのことをロシア側に納得させ、打開への道を見いだしたい。
日ロ外相会談がロシアの保養地ソチであり、北方領土問題で首脳間をふくめて協議を続けることで合意した。
5月の大統領復帰前から日本との関係改善に意欲を見せてきたプーチン氏も玄葉光一郎外相と会談し、「互いに受け入れ可能な領土問題の解決をめざす」との持論をあらためて語った。
だが、今月初めのメドベージェフ首相の国後島訪問について、ラブロフ外相は「日本の抗議は受け入れられない」とし、政府要人の北方領土訪問を続ける考えを示した。「第2次世界大戦の結果、ロシア領になった」という強硬な主張も変わっていない。
空港や産業施設を整備するなど、北方領土の実効支配を強める政策もロシア側は着々と進めている。日ロ関係の改善でプーチン氏がねらうのも領土問題の解決ではなく、ロシア極東やシベリアの開発に必要な資金や技術を引き入れることだ――。そうした警戒が日本側に絶えないのも、当然といえよう。
一方で、注視すべき動きもある。ロシアは4年前に中国との国境交渉を決着させた。昨年はノルウェーとの係争海域を画定し、今月半ばにはウクライナと海峡の国境問題も解決した。
いずれもロシアは、相手国との関係や資源開発での協力など経済的な実利を重視し、領土や権益の面で譲歩もしている。
北方領土問題には、第2次世界大戦終結に際しての旧連合国の思惑や、冷戦の影響が複雑にからみ、解決をさらに困難にしている。
それでも、利益があれば領土面で一定の譲歩にも応じるプーチン氏の外交の性格を、注意深くみていく必要がある。その真意も、結局は交渉を通じてつかんでいくほかない。
中国の経済的・軍事的な強大化が象徴するように、アジア太平洋をめぐる国際情勢は急速に変化している。南シナ海での領土や海洋権益をめぐる争いや北朝鮮の核開発は、ロシアが求めるこの地域との経済関係の強化にも重大な障害となる。
航行の安全もふくめ、さまざまな分野で日ロが共同歩調をとれば、互いに大きな利益を引き出せる。9月に極東ウラジオストクで予定される次の日ロ首脳会談は、そのことを協議する最初の重要な機会である。
本格交渉のスタートとすべく、万全の準備で臨むべきだ。
自営業者やパート労働者らが加入する国民年金で、保険料の未納がまた増えた。昨年度の納付率は58.6%で、4年続けて過去最低を更新した。
サラリーマンやその配偶者らを含む公的年金の加入者全体では95%が納めている。しかし、国民年金では加入者約1900万人のうち、今年3月まで2年間、保険料を払っていない人が320万人もいる。
未納問題が年金への不信や不公平感を高め、それが未納につながる悪循環を、早く断ち切らねばならない。政府は踏み込んだ対策をとる必要がある。
まずは「保険料を払えるのに払わない人」への対策だ。
悪質な未納者からは強制徴収できる仕組みがある。ただ、日本年金機構が最終的に財産を差し押さえた例は、昨年度で5千件余り。前年度から増えてはいるが、1万2千件近かった06年度と比べれば半数以下だ。
年金記録問題への対応などに追われ、強制徴収が手薄になったという。
年金機構から厚生労働省、財務省を通じて国税庁に滞納処分を委任できる仕組みも、国民年金では使われたことがない。
国税庁には税金の滞納処分を通じてノウハウが豊富にある。「国税庁が乗り出した」というだけで、一定の効果が期待できよう。政府もやっと積極的に活用する方針を打ち出した。
年金機構と国税庁を核に、徴収業務の連絡と調整を担う組織を立ち上げる構想もある。縦割り意識を捨て、連携を深めてもらいたい。
保険料を「払えない人」への対策も欠かせない。
障害者や生活保護の受給者のうち一定の人は、保険料が自動的に免除される。所得の少ない人も、申請すれば全額または一部が免除される。
年金機構は市町村などから得た所得情報に基づき、免除の対象者に文書を送って申請を促している。年に百数十万件に及ぶものの、応じない人が多い。申請して全額免除になった人は3月末で230万人いるが、1年間で9万人増えただけだ。
未納が続くと将来、年金を受け取れなくなる恐れが高まる。無年金や低年金の人が増えないようにするには、申請を待たずに免除手続きができるようにすべきだろう。
年金も保険である以上、「本人が申し込む」という申請主義が原則ではある。ただ、その見直しがたびたび議論されてきたのは、未納問題が一向に改善しないためだ。厚労省は一歩踏み出すときではないか。