子どもたちの歓声が響いていた海水浴場が、静まり返っている。宮城県で海開きしたビーチは一カ所だけ。震災の地殻変動で砂浜自体が消えた浜辺も多い。最大で一・二メートル大地が沈むほど激烈な地震のエネルギーだった▼地球の表面積平均の約百三十倍の率で地震が発生し、世界の地震の揺れの一割が集中する国。それが日本だ。震源が地下百キロより浅く、マグニチュード4以上の地震が起きた場所に印を付けると、列島は真っ黒になった▼この図に世界の原発分布図を重ねてみる。地震の頻発地域に原発を増殖させている異常な国は、日本以外にはないことが分かる▼福島第一原発の事故をめぐる政府の事故調査・検証委員会が最終報告書を提出し、国会など四つの事故調の報告が出そろった。主因が津波なのか、地震なのか、未解明のままだった▼もはや原因など、関心もないのだろう。大飯原発を再稼働させたばかりの関西電力の社長は、福井県の高浜原発の再稼働にまで言及した。後に陳謝したが、経営を守りたいという本音がにじみ出ている▼きのう夜、原発の再稼働に反対する何万人もの波が国会を包囲し、正門前の道路を埋め尽くした。震災前の日本には戻さないという強い意志が、時計の針を戻そうとする既得権益者たちと激しくぶつかり合う。変えられない社会を変える。日本の将来を左右する闘いは続く。