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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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歴史の節目の中で明瞭なのが改元だ。100年前のきょう、明治天皇の崩御を受けて大正天皇が即位した。大正は14年ほどだが、社会運動が花開き、本格的な政党内閣ができた時代として意義深い▼改元の年は、東京市電のストライキで明けた。死の床の石川啄木が所感を記している。「国民が団結すれば勝つということ、多数は力なりということを知ってくるのは、オオルド・ニッポンの眼(め)からは、無論危険極まることと見えるに違いない」▼軍需工場や鉱山でも労働争議が起き、都市の商工業者は悪税廃止を求めた。富山から広まった米騒動や、普通選挙の要求。行動する国民に、藩閥政治に代表される「古い日本」は揺らいだ。ただデモクラシーとは名ばかりで、そのツケは次の昭和に回る▼昨夕、都心に「原発とめろ」「福島かえせ」が再びこだまし、デモ参加者は国会前に押し寄せた。日の丸を掲げてデモを批判する一群もいたが、割って入る警視庁の警備は見たところ穏当だった。喧噪(けんそう)の中で思ったのは、言論と表現の自由を命がけで根づかせた先達のことだ▼民主主義の成熟ぶりは、街頭行動の「賢さ」と、権力側の「こらえ性」が示す。中国では、暴徒化した群衆が手荒く鎮圧され、取材していた本紙上海支局長が多数の警官に暴行された。彼は、強権の闇に切り込む記事をいくつも書いている▼一党独裁の下で13億人が暮らす異形が、末永く続くとは思えない。今はただ、歴史の節目が早く、静かに訪れることを祈る。