HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 38489 Content-Type: text/html ETag: "16f6248-22e7-1aed61c0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Thu, 26 Jul 2012 20:21:15 GMT Date: Thu, 26 Jul 2012 20:21:10 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年7月27日(金)付

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 没して8年になる詩人の石垣りんさんは、高等小学校を出て銀行に入った。一家を支えて働きながら詩を書いていた。「月給袋」という詩は、こんな書き出しだ▼〈縦二十糎(センチ)/横十四糎/茶褐色の封筒は月に一回、給料日に受け取る。/一月(ひとつき)の労働を秤(はかり)にかけた、その重みに見合う厚味(あつみ)で/ぐっと私の生活に均衡をあたえる/分銅(ふんどう)のような何枚かの紙幣と硬貨……〉。報酬とは、注ぎ込んだ時間と労力の価値を表す「分銅」に他ならない▼ならば、この分銅はあまりに軽い。全国平均で737円という最低賃金(時給)である。まじめに働いても生活保護水準を下回ることもある。これでは意欲もなえよう。人というものを買い叩(たた)きすぎていないか▼最低賃金は都道府県ごとに定められ、毎年夏に厚労省の審議会で目安を決める。それが平均でたった7円の引き上げにとどまった。1日8時間で56円の増では、雀(すずめ)の涙にもならない▼貧困問題に詳しい湯浅誠さんに聞くと、そもそも最低賃金は家計を助けるパートやアルバイトを想定していた。しかし時代は変わり、これで生計を立てている人は少なくない。いわば「小遣いの基準を賃金にあてているようなもの」だという▼企業が悪い、と叫ぶつもりはない。だが資源に恵まれない日本の最大の資源は、額に汗する「人」ではなかったか。千分の1秒の金融・証券取引で巨富を手にする仕組みの一方、大勢が「1時間7円」に泣く図はいびつだ。格差を縮める政治の意志は、どこにある。

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