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朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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福島第一原発をめぐる政府の事故調査・検証委員会が最終報告をまとめた。民間、国会それぞれの事故調を含め、第三者による検証は一区切りとなる。しかし、事故の発生と拡大の詳細な[記事全文]
米政府にも、ことの深刻さをよく考えてもらいたい。沖縄県の普天間飛行場に配備される予定の米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイ12機が、山口県の米軍岩国基地に陸揚げされた[記事全文]
福島第一原発をめぐる政府の事故調査・検証委員会が最終報告をまとめた。民間、国会それぞれの事故調を含め、第三者による検証は一区切りとなる。
しかし、事故の発生と拡大の詳細な経過は、どこも解明できなかった。原因究明を続けることが不可欠だ。
それぞれの事故調を通じて、事故を招いた土壌や背景はずいぶんと明らかになった。
重大な事故は起きないという「安全神話」が形づくられた過程、行政の怠慢、東京電力ら事業者の当事者意識の欠如、有効な防災対策を講じ得なかった自治体の備えの甘さ――。
そうした構造的要因が、事故時の混乱につながった。原子力規制委員会を中心とする新たな体制は、教訓をきちんといかさなければならない。
問題は、「事故炉で何が起きたか」について、未解明な部分が多く残ったことだ。
巨大事故の究明を語るとき、お手本とされるのは、1986年に起きた米国のスペースシャトル・チャレンジャー事故の報告書である。
破片や写真を可能な限り集めて、想定される原因を一つずつつぶし、固体燃料ロケットの部品不良を割り出した。千分の1秒単位で何が起き、爆発にいたったかを解明している。
もちろん今回の事故は、状況に違いがある。とくに事故炉の内部は、強い放射能のために直接調べることは困難だ。
しかし、国内にある同じ型の炉を使ったり、小さなプラントを造ったりして再現実験をすることは可能だったはずだ。
コンピューターを使った解析も、電源喪失後の個々の作業について、「この弁を開いていたらこうなる」「この時点で窒素を投入したら水素爆発が防げたか」など、枝分かれしていくシナリオを検証する。
そうすれば、問題が炉や建屋の構造にあるのか、作業のミスなのかといった核心に、もう少し迫れただろう。
委員長の畑村洋太郎氏自ら、23日の会見で「再現実験をやりたかった」と言及している。時間や陣容が足りなかったというが、まさにそのための政府事故調ではなかったか。
これで終われるはずもない。世界に向けて、事故原因を解明する責任が日本にはある。
たとえば、原子力規制委員会のもとで、研究者や技術者を糾合した専門チームをつくり、事故の工学的な検証にあたってはどうか。
不断の取り組みを続けない限り、「収束」はやってこない。
米政府にも、ことの深刻さをよく考えてもらいたい。
沖縄県の普天間飛行場に配備される予定の米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイ12機が、山口県の米軍岩国基地に陸揚げされた。
国内ではオスプレイの安全性への懸念がますます強まっているが、日米両政府は普天間配備と本土での飛行訓練の計画は変えていない。
だが、それは日米同盟の根幹に影響しかねないリスクをはらんでいる。米政府はそこを十分に理解すべきだ。
両政府は、米軍が4、6月のモロッコと米フロリダでの事故調査を8月にまとめ、日本側がその安全性を確認するまでは、国内では一切の飛行をしないことで合意している。
森本防衛相は、調査に納得がいかなければ、米側に押し返すという。日本の閣僚として当然の態度だが、不可解なのは、それでも10月の運用開始は動かさないとしていることだ。
これでは、検証が形ばかりだと告白しているようなものではないか。こんな姿勢だと、どんな結果が出ようと国民の納得は得られまい。
米軍による過去の事故調査では、調査委に空軍司令部が圧力をかけたことも伝えられる。こうした事例もふくめた洗いざらいの調査は不可欠だ。それには相応の時間がかかる。
沖縄県民らが反発しているのは、オスプレイの安全性に疑問があるからだけではない。
「世界一危険な飛行場」と米高官が認めた普天間の移設が、一向に進まないこと。1990年代に米側からオスプレイ配備の方針を伝えられていたのに、政府がなかなか公表しなかったこと。こうした不信が積もりに積もったあげくのことなのだ。
日本政府は、問題がこじれれば、すでに決まっている海兵隊の一部グアム移転や嘉手納基地以南の米軍施設の返還などにも影響しかねないという。
しかし、市街地に囲まれた普天間で、万一の事故がおこればどうなるか。
仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事が、すべての米軍基地の「即時閉鎖撤去」というように、日米同盟の土台が不安定になるのは間違いない。
「アジア回帰」を進める米国の戦略にとっても、大きなマイナスだ。
クリントン国務長官は「オスプレイの沖縄配備は、米軍による日本防衛や災害救援の能力を高める」という。だが、それ以前に安全保障の基盤が揺らいでは、元も子もない。