HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 38150 Content-Type: text/html ETag: "18fb9ca-22ab-1ac47640" Cache-Control: max-age=2 Expires: Sun, 22 Jul 2012 23:21:12 GMT Date: Sun, 22 Jul 2012 23:21:10 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年7月23日(月)付

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 英語のカバーは「見せかけ」の意味でも使われる。覆という漢字にも「包み隠す」の含意がある。原発事故の後始末で、これらを地でいく「被曝(ひばく)隠し」が発覚した。収束作業に携わる建設会社の役員が、線量計を鉛のカバーで覆い、被曝線量を低く装うよう作業員に指示していた▼彼らは、法定の被曝量に達するとしばらく働けない。現場を仕切る役員は、渋る作業員をこう説得したという。「自分で自分の線量守んないと、1年間原発で生活していけない」。5人ほどが手製カバーをつけて働いたらしい▼福島の作業環境は、命がけという意味で戦場だ。線量のごまかしは、10発の敵弾を浴びた兵士に、「5発ということにして戦い続けてくれ」と言うに等しい。流れた血は戻らないのに▼高線量の現場は「金になる」といわれる。作業員が線量を使い果たせば人手を欠き、せっかくの仕事が逃げると案じたか。愚かしい話である。守るべきは命であり、線量計や会社ではない▼だが、この役員を責めても始まらない。あけすけな不正の根底には、下請けの弱い立場があるからだ。これまでに放射線を浴びた2万数千人の多くは、東京電力の社員ではない。無理や不都合を下へ、外へと押しやる悪習が変わらぬ限り、安全は守れまい▼現場の苦闘は、40年かかるという廃炉まで続く。作業員たちが、いたずらに命を削ることなく暮らせるよう、危険に見合う待遇が必須である。事故以来、この国は彼らの頑張りに守られているのだから。

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