格安航空会社(LCC)の参入が相次いでいる。夏休みの空の旅に利用する人もいるだろう。合理化の徹底で安さを実現するLCCは、欠航などのリスクと背中合わせであることも注意したい。
「遅延に次ぐ遅延で、旅程を大幅に変えざるを得なかった」
「札幌(新千歳空港)から最終便で成田に到着したら、すでに東京へ行く電車がなかった。運賃三千円もするバスに乗る羽目となり何のための格安航空か」−。
LCC(ローコストキャリアー)は、その安さばかりに目が向かいがちだ。確かに運賃だけなら国内航空大手のおおむね半額から三分の一である。早めの予約や、週末の便より週半ばの方が安いなど、買い方次第ではさらに低価格となる。
だが、気を付けなければならないのは、運賃以外に思わぬ出費となる場合があることだ。例えば、食事や飲み物など機内サービスはすべて有料、予約はインターネットが原則で、電話予約だと千〜五千円の手数料がとられる。クレジットカードでの支払いも、LCCの提携カード以外は手数料が数百円、といった具合である。
LCCは三月に関西圏でピーチ・アビエーションが開業し、首都圏では今月三日にジェットスター・ジャパンが就航した。来月からはエアアジア・ジャパンが成田で、近いうちに中部圏などでも就航が予想されるが、不慣れな利用客から戸惑いの声も少なくないのが現実である。
利用者が最も注意すべきは、遅延率や欠航率が航空大手に比べて格段に高いことだ。コスト削減で少ない飛行機を使い回す結果、遅れが生じると玉突き式に遅延が起きる。航空大手と違い、欠航した場合の振り替え便は原則ない。こうしたリスクを覚悟のうえで利用しなければならない。
定刻通りの運航や手厚いサービスが当たり前と感じている日本人にとってLCCは、その常識を覆すビジネスモデルである。安さを選ぶのは自己責任という欧米流サービスと理解する必要がある。
利用者の選択肢が増えることは歓迎すべきだ。ピーチが就航した関西空港−札幌路線は旅客数が大幅に増加し、新たな需要を掘り起こした。本場の欧米でLCCは三〜四割のシェアを占めている。LCC事業者には、空港アクセスの改善やお年寄りらにも分かりやすい丁寧な説明など、日本でも受け入れられるようなサービスも期待したい。
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