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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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熱帯の鳥は総じて色あざやかだ。暗い密林で仲間を見分ける術(すべ)らしいが、派手な色調と暑さは相性がいいように思う。アフリカの民族衣装が太陽の下で映えるように、この季節、はっきりした色が似合う▼雨上がりの散歩道を彩るのも、めりはりの利いた花色だ。七変化を終えて、アジサイのパステルカラーは薄れ、ゼラニウムの紅、メドセージの青紫、マリーゴールドの黄や朱が道端に揺れている▼原色を重ね塗りしたような炎暑に処するには、色は白、食べ物なら冷や奴(やっこ)、そうめん、かき氷。京阪の夏には、梅雨の水で肥えるといわれる鱧(はも)も欠かせない。骨切りし、熱湯をくぐらせた姿は満開の白牡丹(はくぼたん)に例えられる。氷水でしめて梅肉や酢みそで食すが、椀種(わんだね)にしても涼やかだ▼瀬戸内寂聴さんの小説『京まんだら』に、鱧椀を描いた一節がある。「お椀の中に鱧がまるく白玉のように身をまるめ、透明なじゅん菜(さい)と入っている。汁は爽やかにほろ甘く、たしかに夏の微風をとかしてつくった様(よう)な味であった」。蒸し暑い洛中(らくちゅう)のこと、やさしい風もまた貴い▼〈坪庭を吹き抜く風や鱧料理〉小路智壽子。季節外れの冷涼を経て、きょうは大暑、週明けには夏が戻るという。のべつ鱧ざんまいとはいかないが、せいぜい食卓を白で彩り、内から冷やしたい▼本社編の『色の博物誌』によると、人種や文化圏を超えて、世界であまねく好かれる色は青だという。次が白。この順番が日本では逆になる。そこまで読んで、豆腐を買いに出た。