日本へ輸送中の米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ十二機が近く到着する。開発段階から墜落事故が多発し、安全性への懸念が残る。日本政府は米側の配備強行をなぜ止めないのか。
オスプレイは、老朽化したCH46輸送ヘリに代わり沖縄県宜野湾市の米海兵隊普天間飛行場に配備される。二十三日にも山口県岩国市の米海兵隊岩国飛行場にいったん陸揚げされ、試験飛行を経て、十月から沖縄での本格運用に入る計画だという。
しかし、開発段階の一九九一年から二〇〇〇年までに四件の事故で三十人が死亡。〇七年の実戦配備後、今年も四月に北アフリカのモロッコで、六月には米フロリダ州で墜落事故が続いた。
「寡婦製造機」と呼ばれたほど安全性に懸念が残る航空機を改良されたとはいえ「世界一危険」な普天間飛行場になぜ配備するのか。
配備先の沖縄、一時搬入先の山口両県とも反対するのは当然だ。
説明に訪れた森本敏防衛相に、仲井真弘多沖縄県知事は「断固拒否する」とはねつけた。沖縄では八月五日、配備に反対する県民大会が開かれる。野田佳彦首相は「反原発」同様、直接行動で示される民意を軽く見るべきでない。
オスプレイ配備は沖縄だけの問題にとどまらない。本州や四国、九州各地で最低高度百五十メートルの低空飛行訓練が計画されているからだ。日本全体がこの問題に関心を持ち、声を上げる必要がある。
米海兵隊だけでなく、日本政府に対しても、なぜ配備を止められないのかという不信感が募る。
オスプレイ配備は日米安全保障条約で事前協議の対象とする「装備の重要な変更」に当たらず、日本側の同意は不要とされる。
日本政府は専門家の調査チームが独自に安全性を確認することにしているが、首相は日本側に配備拒否の権限はないとの立場を変えておらず、十月の沖縄での運用開始は現段階では揺るいでいない。
米側が配備を強行すれば、米軍基地が住民の敵意に囲まれ、安保体制の円滑な運用に大きな支障をきたしかねないことに、思いを至らせるべきではないのか。
米国内ではオスプレイの低空飛行訓練計画に周辺住民から懸念が出て、訓練の半年間延期と内容見直しが行われていることが、横浜市のNPOの調査で確認された。
同様のことがなぜ日本ではできないのか。米側による日本国民への差別的対応を日本政府が許すなら対米従属との批判は免れまい。
この記事を印刷する