公務員の上乗せ年金制度を見直す政府の有識者会議が報告書をまとめた。廃止が決まった今の制度に代わる新たな上乗せ制度を打ち出している。官民格差是正が目的ではなかったのか。
公務員らの共済年金と会社員の厚生年金を二〇一五年に一元化する法案が今国会に提出され衆院を通過した。
法案には月平均二万円が上乗せされる共済年金の加算制度の廃止も盛り込まれた。民との格差をなくすためだ。
有識者会議はこれに代わる上乗せ制度を検討するために設けられた。そもそも公務員独自の上乗せ制度を新設する妥当性があるのかという検討は十分にされなかった。しかも会議は非公開だった。改革に広く理解を求めようとする姿勢ではないだろう。
報告書では、民間より約四百万円高い公務員の退職金を民間の水準まで引き下げる。
その上で民間では退職金と退職金の一部を元手にする企業年金を合わせた退職給付が一般的として全額を退職金として払うのではなく、一部に上乗せ年金制度を新設すべきだと提言した。
上乗せ分は終身年金と有期年金で給付される。企業年金に準じたというが、民間の多くは有期だ。
上乗せ年金の掛け金負担は“労使折半”である。つまり本人と税で折半する。掛け金の運用が想定を下回れば税の追加投入を迫られる懸念が残る。これで厚生年金の加入者は納得するだろうか。
比較対象とした民間の退職給付額のとらえ方にも疑問がある。九割強の企業に退職給付制度があり、その約六割に企業年金もあるとの人事院調査を新制度の根拠にしている。
だが、企業年金加入者は約千六百万人で厚生年金加入者の半分に満たない。人事院調査では対象に従業員五十人未満の企業が入っていない。対象業種も限定している。給付が厚い大企業に偏っていて厚生年金加入者の実態をとらえていない調査だとの批判がある。
公務員に有利な調査で官優遇を続けたいのではないか。
共済年金と厚生年金の一元化では、共済の積立金約四十八兆円の全額が厚生と統合されるわけではない。約半分は公務員の財産として共済に温存される。国と地方の事務組織も存続し、天下り先として残りかねない。
年金制度は公平性が強く求められている。名ばかりの一元化は許されない。
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