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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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古(いにしえ)の神話を踏まえて、東日本大震災のあと詠んだそうだ。短歌界の重鎮、岡野弘彦さんの歌集から拝借する。〈したたりて青海原につらなれる この列島を守りたまへな〉。火山があり底知れぬ海溝が沿う列島で、幾度も繰り返されてきた受難を思いつつ、歌に表したという▼日本の自然は美しさと非情が相混じり、国土は数限りない地異に揺さぶられてきた。なのに恐れも、畏(おそ)れも無かったのか。原発をめぐる無責任が、また一つ明るみに出た。北陸電力志賀(しか)原発(石川県)の直下に活断層があるらしい▼専門家によれば「典型的な活断層」という。「よく審査を通ったなとあきれている」と聞けば、地元の人は怒りに震えよう。ごまかしか見て見ぬふりか、政・官・業のなれ合いの泥沼は、底知れず深い▼福井県で再稼働した関電大飯原発にある断層も、活断層の疑いがある。だいぶ前だが、九電の川内(せんだい)原発(鹿児島県)では地質調査のサンプルが差し替えられたと問題になった。隠されているものの膨大さが想像できる▼昭和30年代、渡英した原発調査団が、向こうの技術者たちに関東大震災の記録映像を見せた。「こんなことがあるのか」と誰もが驚いたという。プレートがぶつかり合い、活断層ひしめくその列島に、いま50基が林立する▼事があれば制御不能になるシステムを、人知の及ばぬ地異にさらす。これは一種のギャンブルだろう。負けて目覚めぬ者は身を滅ぼす。福島に懲りず国土を賭け金にするのは、愚行である。