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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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だれが詠んだか〈素通りはさせぬと鰻(うなぎ)屋のにおい〉と川柳にある。うちわでパタパタとあおいで、炎暑の街に香ばしいにおいを流してよこす。土用の丑(うし)の日にウナギの蒲焼(かばや)きを食べる風習は、江戸の昔に始まった▼ルーツは学者の平賀源内とも、戯作者(げさくしゃ)の大田南畝(なんぽ)ともされる。はやらない鰻屋に客を呼ぶため、今で言うキャッチコピーを考えたというが、「伝説」の域を出ない。ともあれ国民的行事となり、今年は27日がその日になる▼梅雨明けとともに、がぜん腹の虫が鳴る向きもあろう。だが、いかんせん養殖用の稚魚のシラスウナギが捕れていない。不漁続きの近年でも今年は際だつ。価格は高騰を超えて暴騰の域といい、蒲焼き店の廃業も出る深刻さという▼小売りの蒲焼きも値を上げていて「代替品」が人気らしい。サンマやアナゴのほか、豚バラ肉の蒲焼きもスーパーに並ぶ。ウナギは昔日の「特別なごちそう」に戻ったような印象だ▼日本人のウナギ好きは突出し、世界で食べる約7割を胃袋に収めるという。消費大国への目は厳しく、欧州に続いて米国が、野生生物を保護するワシントン条約で規制する検討を始めた。食文化ねらい撃ちの感もあるが、ウナギが減って黄色ランプが灯(とも)りそうなのは否めない▼冒頭の句との掛け合いでもあるまいが、〈うなぎ屋の前でともかく深呼吸〉が笑わせる。においをしっかり鼻で味わい、さて、暖簾(のれん)をくぐるか立ち去るか。思案のしどころとなろう丑の日が、今年は少し恨めしい。