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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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67年前のきのう7月16日、米国ニューメキシコ州では太陽が2度昇った、と言われる。この日の夜明け前、アラモゴードの荒野で大音響とともに巨大な火の玉が炸裂(さくれつ)した。人類初の原爆実験である▼長崎で被爆した作家の林京子さんは1999年にこの爆心地を訪ねた。後に感慨を本紙に語っている。「熱く、草のはぜる音さえ聞こえない静かな荒野でした。それまで私たちが核の最初の被害者だと思っていましたが、大地は傷ついたまま、黙って耐えていた」。重い言葉が福島を連想させる▼原発事故で傷ついた故郷の地を離れて、今も万の人が戻れない。その苦境を置き去りにするように、政府は再稼働へ舵(かじ)を切った。抗議を込めて、きのう7月16日、東京であった「さようなら原発」の集会は大勢の参加者が広い代々木公園を埋めた▼炎暑にめげずご高齢の姿が目立ったのは、孫たちの未来を案じてだろうか。「故郷を壊すな!」「子どもを守ろう」。プラカードや幟旗(のぼりばた)が、人々が全国から集まったことを教えている▼呼びかけた一人、音楽家の坂本龍一さんが、壇上から「福島のあと沈黙していることは野蛮だ」と語ると大きな拍手が湧いた。質、量ともに巨大な、脱原発への「志」の結集となった▼「実際に生きている人間の直感の方が、科学的知を超えて物事の本質に迫る瞬間がある」という反原発の科学者、故高木仁三郎さんの言葉を思い出す。権威は必ずしも賢ならず。生活者の肌感覚を蔑(さげす)まない政治が、今こそほしい。