HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 48957 Content-Type: text/html ETag: "16c5ef2-36dc-38197000" Cache-Control: max-age=1 Expires: Mon, 16 Jul 2012 20:21:02 GMT Date: Mon, 16 Jul 2012 20:21:01 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:社説
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2012年7月17日(火)付

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海自文書隠し―国民に対する裏切りだ

何回おなじことが繰り返されるのか。そのたびに行政に対する信頼は傷つき、国の土台がむしばまれてゆく。海上自衛隊から「破棄した」はずの文書が見つかった。2004年におきた隊[記事全文]

予防接種―防げる病から子を守れ

住んでいる場所がどこであろうと、また親の経済力がどうあろうと、予防接種で守れる子どもの命は、きちんと守る。当然のことに思えるが、そうなっていないのが日本だ。[記事全文]

海自文書隠し―国民に対する裏切りだ

 何回おなじことが繰り返されるのか。そのたびに行政に対する信頼は傷つき、国の土台がむしばまれてゆく。

 海上自衛隊から「破棄した」はずの文書が見つかった。2004年におきた隊員の自殺をめぐり、同じ護衛艦の乗組員にいじめなどの実態を聞いたアンケート結果だ。薬害エイズ事件のファイル隠しを思い起こす。

 海自は、自殺の原因を知ろうとした遺族の情報公開請求に「文書はない」と答え、賠償を求められた訴訟でも、裁判所の提出命令に応じなかった。

 公正で民主的な行政の推進をかかげて制定された情報公開法と、裁判を適正に進めるためにある民事訴訟法。その両方をないがしろにした行いである。

 罪はきわめて重い。

 現役の3等海佐が今年4月に「海自は文書を隠している」という陳述書を裁判所に出したのが発覚のきっかけだった。急きょ調査を始めた海自の中間報告によると、今年初めに別の職員が文書に気づいたが、対応に悩み、そのままにしたという。

 海自は、この職員の行為と文書管理について「不適切」だったとしている。だが、それで済まされる問題ではない。

 告発した3佐は、遺族が提訴した直後の06年に海自の情報公開室から「アンケートは存在するが、破棄したことになっている」と聞かされた様子を、詳細に述べている。08年には海自の公益通報窓口に訴えたが、退けられたともいう。

 文書引き継ぎの不備や個々の職員の判断のまずさではなく、意図的な情報隠しがあったことを強く疑わせる内容だ。

 いい加減な幕引きは許されない。最終報告にむけて、徹底した調査と解明を求める。

 昨年4月に閣議決定された情報公開法の改正案は、「文書を開示しないときは、その理由をできる限り具体的に記載しなければならない」という条文を新たに設けるとしている。

 「文書はない」と言えば、不開示がまかり通る現行制度を正すのが狙いだ。廃棄の経緯などを書かせれば、今回のような事態はある程度封じられよう。

 改正案にはこのほか、「知る権利」の明記や、開示情報の範囲の拡大が盛りこまれている。だが議員の問題意識は低く、提出から1年たつのに国会は審議すらしようとしない。

 この怠慢は、主権者である国民への裏切りと言っていい。

 国民が情報を知り、行政をチェックすることで民主主義は進展する。海自問題を機に、情報公開の重要性を再確認したい。

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予防接種―防げる病から子を守れ

 住んでいる場所がどこであろうと、また親の経済力がどうあろうと、予防接種で守れる子どもの命は、きちんと守る。

 当然のことに思えるが、そうなっていないのが日本だ。

 世界保健機関(WHO)が推奨し、先進諸国では公費で受けられる予防接種でも、日本では予防接種法の対象になっていないものが多い。いわゆる「ワクチンギャップ」である。

 厚生労働省は、予防接種制度の見直しを求める審議会の提言を受けて、来年から新たに三つのワクチンをその対象に加える方針を決めた。これを第一歩にして、ギャップの解消を図る必要がある。

 予防接種は1994年に義務接種から勧奨接種に変わり、受けるかどうかは個人の判断が重視されるようになった。

 予防接種法に基づく定期接種の場合は、公的な費用負担があり、健康被害が出たときの補償の仕組みもある。現在その対象となっているのは、ジフテリアや麻疹など八つだ。

 新たに加わるのは、インフルエンザb菌、小児用肺炎球菌、そして子宮頸(けい)がんだ。2010年度から国が費用の半分を負担する制度があったが、今年度で終わる。提言は、水痘やおたふくかぜなど四つも合わせて定期接種化の検討が必要としつつ、さきの三つが最優先とされた。

 問題は財源だ。

 定期接種を担うのは市町村であり、実費徴収もできることになっているが、住民のために全額を公費負担しているところがほとんどだ。定期接種が増えればそれだけ、市町村にとっては重い負担になる。

 地方も財政難とあって、国の責任で財源を確保するよう求める声も上がっている。

 自治体の財政事情で予防接種が制限されることはあってはならない。費用負担の抜本的な見直しが必要だ。

 国の責任を明確にし、将来的には、医療保険に組み込むことも考えるべきではないか。

 現在の保険は予防には使えないが、病気を防ぐことは医療費の軽減と、ひいては社会的な損失を防ぐことにつながる。

 医学の進歩によって、予防できる病気は増えている。そんな新しい時代にふさわしい保険のあり方を探るときだ。

 英国では国がワクチンを一括購入して経費を節減している。

 信頼される予防接種制度のためには、専門家が国際的な動向や研究成果にも目配りし、科学的な根拠をもとに必要性を判断し、副反応をしっかり見張る。そんな組織も不可欠だ。

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