少々疲れ気味の中年世代を励ますような大記録が生まれた。広島県福山市営競馬所属のモナクカバキチ(オス、十三歳)が通算五十五勝目を挙げて、地方競馬の歴代最多勝記録を塗り替えた▼カバキチは人間なら五十代。今年二月に地方競馬通算三千勝を最高齢で達成した岡崎準騎手(51)が騎乗し一番人気で出走した。ゴール間際で先頭をかわすと、観客が拍手喝采を送ったという▼プロ野球界も「中年の星」が光る。中日の山崎武司選手(43)は一昨日、今季初本塁打を放ち、球団最年長記録を更新した。きのうも活躍し今季初のお立ち台に。中日の三、四、五番はなんと三人とも四十代だった▼球界では、四十代でも現役を続ける選手が確実に増えている。負傷を避ける練習の工夫など、理由はありそうだが、前中日監督の落合博満氏は自著『采配』でこんな視点を示している▼「スポーツ医学やコンディショニングが目覚ましく進歩したのも一因になるだろうが、最も大きな理由は、下(若手)からの突き上げが弱くなっていることではないか」。冬の二カ月間は、監督、コーチが若手選手を一切、指導できなくなったため、成長が緩やかになったという推測である▼スポーツに限らず、若手がベテランを脅かす組織は強い。伸び盛りの若手に負けまいと、経験に裏打ちされた技に磨きをかけた時、星はさらに輝きを増す。