HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 15 Jul 2012 20:22:36 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんの小説『水神』は、歴史小…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんの小説『水神』は、歴史小説としては珍しく主人公は農民だ。江戸時代の初期、渇水に悩む五人の庄屋が、身代をなげうって筑後川に堰(せき)を築いた史実に着想を得た。失敗した時、庄屋たちを見せしめに吊(つる)す磔(はりつけ)台が立てられる中、大河に立ち向かう農民たちの姿は感動的だ▼豪雨で氾濫した筑後川の様子がこう描写されている。<茶色く濁った川面を、木の枝や藁(わら)、板壁のような物が流れていく。いや流れるのではなく、川そのものが内側から押し上げる力で蠢(うごめ)いている>▼荒れ狂う大河の激しさを作家は想像力で補って描いたが、テレビの映像は筑後川の濁流が堤防を乗り越えて、建物や田畑をのみ込んでいく様子を生々しく伝えた▼三十人が死亡、行方不明になった九州北部の豪雨で、福岡などの四県は約八万五千世帯、二十四万人に避難指示を出した。暖かく湿った空気が、舌のような細長い形で流れ込んだ「湿舌」の現象によって、記録的な豪雨がもたらされたという▼東日本大震災で津波の高さを段階的に引き上げた反省から、気象庁は「これまでに経験したことのない大雨」という強い表現で警戒を呼びかけた。そのことで救えた命があったのだろうか▼湿舌が原因の集中豪雨は「姿なき台風」とも呼ばれる。「全国どこでも、同様の大雨が降ってもおかしくない」という警告を厳しく受け止めたい。

 

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