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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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風伯(ふうはく)と言い、雨師(うし)と呼ぶ。風の神、雨の神のことである。その風伯雨師がもたらす空の営みに、日本人は多彩な名前をつけてきた。風の名は全国で2千を超すという。雨の名前も負けずに多い▼殴り雨、ごず降り、ざぶり、滝落(おと)し、柴槫雨(しばくれあめ)……。激しい雨だけでも様々な名がある。柴槫とは雑木の板材。それを組んだ筏(いかだ)が、増水した川を流れる光景に由来するそうだ(『雨の名前』小学館)。どれも土地土地の経験が生んだ呼び習わしだろう。しかし今回、雨は経験則を超える激しさで熊本、大分を襲った▼「これまでに経験したことのないような大雨」の表現で気象庁は注意を喚起した。危急を伝えるために先月から始めた試みの、初めての実施になった。そして実際、1時間に108ミリという雨が降った▼よく聞く「バケツをひっくり返したような雨」とは1時間に30ミリ以上だという。50ミリを超すとあたり一面が白っぽくなり、80ミリだと恐怖を感じる。108ミリの体感は推して知るべしだろう▼気象随筆の倉嶋厚さんが、雲のことを「空の水道の蛇口」と言っていた。地球の表面には均(なら)すと年に約千ミリの降水がある。だが天意はままならず、世界は豪雨と干ばつが偏(かたよ)る。悔しいが、蛇口を開け閉めする才知は人間にはない▼気象庁によれば九州上空の「蛇口」はなお緩く、注意がいる。この時期の「荒梅雨」「暴れ梅雨」の名には、先人の苦い経験が染みていよう。水の惑星の水の国。梅雨明けまでひと用心、ふた用心が欠かせない。