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2012年7月14日(土)付

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再生戦略―官庁積み上げ型の限界

政府の国家戦略会議が「日本再生戦略」の原案を決めた。デフレ脱却と経済成長への処方箋(せん)という位置づけだ。経済を活性化させる努力は、財政再建を進めるうえでも欠かせない[記事全文]

南シナ海―このままでは危ない

ここでも「主役」は中国だった。東南アジア諸国連合(ASEAN)や日米中などの外相による一連の会議が、カンボジアであった。大きなテーマとなったのが、フィリピンやベトナムな[記事全文]

再生戦略―官庁積み上げ型の限界

 政府の国家戦略会議が「日本再生戦略」の原案を決めた。デフレ脱却と経済成長への処方箋(せん)という位置づけだ。

 経済を活性化させる努力は、財政再建を進めるうえでも欠かせない。既得権に大胆に切り込む規制改革や新分野への目配りが必要だ。政府、とくに戦略会議議長である野田首相に、その気迫はあっただろうか。

 原案は、各省庁が検討した政策を国家戦略室がまとめた。環境や医療、農業など様々な分野で450項目に及ぶが、2年前の新成長戦略と同様、相変わらずの「官庁積み上げ型」だ。来年度予算の獲得合戦になだれ込む、という構図である。

 新成長戦略の現状は省庁自ら分析している。約370項目のうち、「実施され、成果もあった」は1割止まり。「実施されたが成果が出ていない」が6割を占める。役所が自らの限界を認めたようなものだ。

 発想を切り替えるべきだ。企業やNPO、自治体など現場に通じた関係者に自由に活動してもらう。国は規制緩和などで支える。そういう役割分担だ。

 参考になるのは、2人乗り中心の「超小型車」である。

 「原付きバイク以上、軽自動車未満」の自動車は民間で研究が進んでいたが、拍車をかけたのが36の道府県の連合だ。

 公共交通機関に乏しい地方では車が欠かせない。高齢者向けに、通院や買い物など近距離の移動に徹し、小回りがきく安全な車がないか――そんな発想から開発を後押ししてきた。

 超小型車は仏ルノーが今春、欧州で発売するなど、海外市場も有望という。ここで保安基準づくりなど市販への環境を整えるのが政府の役割だろう。

 農業や社会保障では、株式会社の手足を縛ろうとする意識が役所に根強く残る。

 農水省は、1次産業を加工・流通へと広げる6次産業化のため、国費300億円を投じて投資ファンドを作る計画だ。

 6次産業化なら、大手スーパーや外食産業が農家との連携を深めて引っ張っている。企業による農業生産法人への出資や土地利用に関する規制をゆるめ、自由に動けるようにすることこそ急ぐべきだ。

 子育て支援施設でも、最初から株式会社を遠ざけるのではなく、広く参入を認めたうえで、問題がある業者を退出させる仕組みにしたい。

 海外との経済連携の推進など国にしか担えない分野もある。網羅的に項目を並べ立てるのではなく、まず国がやるべき課題に取り組まなければならない。

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南シナ海―このままでは危ない

 ここでも「主役」は中国だった。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)や日米中などの外相による一連の会議が、カンボジアであった。大きなテーマとなったのが、フィリピンやベトナムなどが中国と領有権を争う南シナ海の問題だった。

 ASEANは、中国との間で南シナ海で武力行使や紛争が起きた場合の「行動規範」づくりに入ることをめざした。

 だが、中国が拒んで実現しなかった。

 緊張が続けば、不測の事態が起きかねない。紛争防止のルールづくりを急ぐべきだ。

 それにしても中国の強硬な姿勢は目に余る。

 12日には、中国の漁船30隻が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島に向かった。領有権を主張するための示威行動であることは明らかだ。

 平和な環境があって初めて、この地域の経済発展がある。緊張状態が続いたり、紛争が起きたりすれば、結局、互いの利益を損なう。中国はそのことを肝に銘ずべきだ。

 一連の会議では、ASEAN内の亀裂も目についた。

 中国に厳しい態度を示すフィリピンやベトナムに対し、中国から多額の援助を受ける議長国のカンボジアが、対中配慮を鮮明にしたのだ。

 その結果、ASEAN外相会議は、南シナ海をめぐる文言で合意ができず、共同声明を出せなかった。45回を重ねた同会議で初めてのことである。

 そもそもASEANは、域内各国がまとまって行動することで存在感を示し、近年の著しい経済発展につながった。

 足並みが乱れれば、国際社会での発言力が低下し、何かと大国の介入を招く。個別の利害を乗り越え、協調態勢を取り戻す知恵を発揮してほしい。

 南シナ海問題をめぐり、中国は第三者は介入すべきではないとして米国や日本の関与を牽制(けんせい)してきた。

 たしかに日米は直接の当事者ではない。だが、南シナ海は重要な海上交通路で、ASEANとの経済的関係も深い。無関心というわけにはいかない。

 クリントン米国務長官が会議に先立って訪れたベトナムでは、対米強硬派も米国の地域への関与を求めるようになってきたという。中国と各国の対立が深まれば、安定の重しとして米国への期待感が強まる。

 この地域で中国と米国が角を突き合わせる。そんな事態を避けるためにも、南シナ海の緊張緩和が進むことを望む。

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