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朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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なぜ、少年は自殺したのか。多くの人が胸を痛めているなか、教育現場や警察がなんとも情けない混乱に陥っている。昨年10月、大津市で中学2年の男子生徒が[記事全文]
沖縄県の尖閣諸島沖で、中国の漁業監視船3隻が日本の領海に侵入した。野田首相が尖閣諸島3島の国有化を表明した直後である。これに対抗して、領有権を主張する狙いと見るのが自然[記事全文]
なぜ、少年は自殺したのか。
多くの人が胸を痛めているなか、教育現場や警察がなんとも情けない混乱に陥っている。
昨年10月、大津市で中学2年の男子生徒が自宅マンションから飛び降り自殺した。
生徒の遺書はなく、直後から遺族の求めで学校は在校生にアンケートを実施した。
「自殺の練習をさせられていた」「先生も見て見ぬふりをしていた」。友人らはそう回答したが、市教委はそれを公表せず、翌11月に「いじめはあったが、自殺との因果関係は不明」と発表し、調査を打ち切った。
市教委は「伝聞の回答が多く、十分な調査ができなかった」とした。だが越直美市長がその対応ぶりを批判すると、市教委は一転、アンケートは2回あったことを明らかにした。
それには「葬式ごっこ」などという言葉もあったが、遺族には伝えていなかった。後手後手にまわる対応には組織防衛と責任逃れの姿勢が目につく。
越市長は自殺の背景を調べるため、専門家による調査委員会をつくり、いじめの実態を改めて調べることを決めた。
その矢先、滋賀県警は学校と市教委を家宅捜索した。昨年9月の体育大会で、同級生3人が生徒の手足を縛り、口を粘着テープでふさいだ暴行の容疑だ。
いじめが背景にある事件では証拠の任意提出を受けるのが一般的で、強制捜査は極めて異例だ。教諭のノートなどを押収したが、それは任意で提供を求めてもよかったのではないか。
県警は生徒の遺族から3回にわたって相談を受けながら、被害届を受理しなかった。そのことへの批判をかわすため、強制捜査に乗り出したと思われても仕方がないだろう。夏休みに在校生らの事情聴取を進めるというが、保護者の立ち会いのもとで慎重な捜査を求めたい。
1人の少年の死に真正面から向き合おうとしているのか。
教育現場や警察の混乱ぶりに目を奪われがちだが、重要なのは、なぜ生徒の自殺を防げなかったのか、ということだ。どの時点でSOSに気づくことができたのかをきちんと顧みれば、自殺を防ぐ手立てにつながるだろう。
それは大津市の立ち上げる調査委員会に期待したい。専門家だけでなく、委員には校区の住民もいれるべきだ。
学校ばかりに責任を負わせることはせず、その地域で暮らす大人たちがいじめの問題に取り組むきっかけにする。子どもたちの異変に気づく機会を増やすことを考えたい。
沖縄県の尖閣諸島沖で、中国の漁業監視船3隻が日本の領海に侵入した。
野田首相が尖閣諸島3島の国有化を表明した直後である。これに対抗して、領有権を主張する狙いと見るのが自然だろう。
いたずらに両国間の緊張を高める行為であり、中国側の自制を強く求める。
折しも、カンボジアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議に合わせて、日中の外相が会談する当日だった。
玄葉光一郎外相は会談で、尖閣問題について「平穏かつ安定的に維持管理していくことが重要」と説明した。
中国側には、さきに尖閣諸島購入を表明した東京都の石原慎太郎知事の動きに乗じて、日本政府が国有化によって現状を変えようとしている、という受け止め方がある。
誤解である。
民間所有であっても、都や国の所有であっても、日本の領土であることに違いはない。しかし、都が買った場合、中国に強硬な姿勢をとる石原氏が挑発的な行動に出る恐れがある。
予期しない事態の発生を防ぐためには、国有化は理にかなっている。
長い目で見れば両国の利益になることを、中国側は理解すべきである。
周辺海域ではここ数年、中国の監視船による領海侵入が繰り返し起きている。むしろ中国側こそ、そうした挑発行為はただちにやめるべきだ。
両国関係の悪化は、中国にとっても得策ではあるまい。外相会談は、双方がそれぞれの立場を主張して終わったが、予定時間を超え、冷静な雰囲気の中で行われたという。
中国政府にも、これ以上、過熱させたくないという思いがあると受けとめたい。
中国は南シナ海でも、フィリピン、ベトナムとの間で領有権をめぐる対立を深めている。ASEANの一連の会議でも、この問題がテーマになった。
そうした中で、今回の領海侵入は中国の強硬ぶりを改めて印象づけ、東南アジアの国々も警戒を強めたのではないか。
中国は、今年後半に指導部の大幅な交代を控える。国内の体制固めに躍起になるあまり、インターネットなどの「弱腰」批判を気にして力の誇示に傾く場面が増えている。
中国の振る舞いは、一つ間違えば周辺国に脅威と映りかねないことを自覚すべきだ。
「大国」を自任するのであれば、冷静に行動できることを示して欲しい。