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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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初めて辞書で引いた言葉を今も覚えている。それは「死にものぐるい」。小学校の何年生だったか、買ってもらった辞書を広げ、だいぶ時間がかかった記憶がある。以来どれほどお世話になったか。今も辞書は座右の相棒、いや先生である▼小学生向けの国語辞書が売れていると聞いて、遠い昔を思い出した。引いた言葉に付箋(ふせん)を張っていく「辞書引き学習」がブームなのだという。付箋に番号をつけ、言葉をコレクションする感覚で意欲が湧くそうだ。やわらかい頭がぐいぐい語彙(ごい)を増やすさまが、五十路(いそじ)の身にはうらやましい▼子どもを辞書に親しませるには、本棚にしまわず、箱から出しておくのが肝要という。なるほど。開くまでに一(ひと)動作多いだけで、つい面倒くさくなるのは、大人も変わらない▼無味乾燥に思われる辞書だが、一般向けの個性派もある。たとえば「政界」という語。これを手元の新明解国語辞典は「〔不合理と金権とが物を言う〕政治家の社会」と説明する。お仕着せにとどまらずに、なかなか楽しい▼いっそう面白いのは、様々な言葉を皮肉とユーモアで定義する私家版の辞典だ。米国人ビアスの「悪魔の辞典」(岩波文庫)だと「政治」はこうなる。「主義主張の争いという美名のかげに正体を隠している利害関係の衝突」。今日もニュースは満載である▼ともあれ、「死にものぐるい」から言葉の森に入った筆者、今も道に迷ってばかりの日が続く。分け入っても分け入っても、コラムの懐はなお深く。