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朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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社会保障と税の一体改革の関連法案が、きのうの参院本会議で審議入りした。衆院段階で、民主、自民、公明3党が法案を修正しており、成立は揺るがないとみられる。[記事全文]
民主党を除名された小沢一郎氏のグループが、新党「国民の生活が第一」を旗揚げした。代表に選ばれた小沢氏は、結党大会で「反消費増税」「脱原発」などを訴えた。[記事全文]
社会保障と税の一体改革の関連法案が、きのうの参院本会議で審議入りした。
衆院段階で、民主、自民、公明3党が法案を修正しており、成立は揺るがないとみられる。
だからといって「消化試合」にしてはならない。
修正協議の過程で、社会保障改革の具体像がぼやけてしまった。こんなときこそ参院の出番だ。若者支援策などを肉付けする、実のある審議を期待する。
ここで、一体改革の意味を改めて確認しておきたい。
少子高齢化に伴って、私たち国民が受ける社会保障などのサービスの費用は、年々増えている。税収では足りず、借金で賄っている。その結果、いまや国の収入の半分が借金である。
一体改革には「増税先行」の批判がつきまとう。だが、現実は「給付先行」なのだ。
こんな状態を続けたら、いったいどうなるか。
子や孫の世代が、親たちが受けたサービスの代金を払うことになる。よほどの経済成長がない限り、自分たちのための支出を削るしかない。
いまでも、90兆円の国の予算のうち、22兆円が借金返済に充てられている。これがどんどん膨らみ、いずれ「首が回らなくなる」のは明らかだ。
だから増税は避けられない。ただ、増税すれば日本の困難が解決するわけでもない。
問題は、少子高齢化に加え、高齢化社会を支える若い世代が弱っていることだ。低賃金の非正規労働が広がり、結婚して子をもうけることも難しい。
社会保障制度を若者や子育て世代に手厚い形に作り直す。税を納める力のあるたくましい若者を育む。これが、一体改革の核心だ。
残念なことに、3党による修正を通じ、そんな社会保障改革の道筋が見えにくくなった。
政府は増税で得られる財源のうち、7千億円を子育て支援にあてる方針だ。ところが、修正で軽減税率導入の可能性が出てきた。税収が減り、子育て支援の額も減ることにならないか。
自民党の主導で「自助」や家族の助け合いを強調した法案が提出された。その結果、家族に頼れない人などへの「公助」が手薄にならないか。
あいまいな状態のまま法を成立させ、増税はしたけれど、税を払う力のない若者ばかり、という結果を招いてはならない。
審議を通じ、次世代支援など一体改革の本来の目的を、与野党が改めて共有する。支援の具体策を明確にする。そんな論議を、参院に望む。
民主党を除名された小沢一郎氏のグループが、新党「国民の生活が第一」を旗揚げした。
代表に選ばれた小沢氏は、結党大会で「反消費増税」「脱原発」などを訴えた。
「民主、自民、公明の3党合意は、国民から政策の選択肢を奪う」とも批判した。
確かに3党が合意すれば、どんな法案でも成立させられる。それにたいする対抗勢力ができたということなら、本来なら歓迎すべきことかもしれない。
だが、思い返してみよう。
この20年間、小沢氏がつくった新党はこれで四つ目だ。
これまでの三つの党は、権力闘争と合従連衡の果て、すでに存在しない。また、その繰り返しではないのか。うんざりする思いの人も多かろう。
こんどは違うというのなら、以下の疑問にしっかり答えてもらわねばならない。
「消費増税の前にやるべきことがある」。小沢氏は大会で何度も強調した。
ならば、どの予算のどこを削れば消費増税が要らないほどの新規財源が生みだせるのか。小沢氏の口から説得力ある考えを聞いたことがない。重要なのは具体策ではないか。
「やるべきこと」は、もちろんやってもらわねば困る。同時に、いまの日本の財政の惨状を考えれば、負担増は避けて通れない。それが分かっているからこそ、小沢氏は細川政権時代の94年に7%の国民福祉税の創設に動いたのではなかったか。
「脱原発」の方向は私たちも異存ない。そこで問いたい。
約1年前、小沢氏は自民党と組んで内閣不信任決議案の可決をめざし、菅首相の「脱原発」方針を葬ろうとした。いつ、どうして考えを変えたのか。
震災から1年4カ月がたった今日に至るも、脱原発や原子力政策のあり方について、小沢氏の口から体系的な考えを聞いたことがない。政権にいたときになぜ、こうすべきだと声をあげなかったのか。
結局、「反消費増税」にしても「脱原発」にしても、まじめな政策論ではなく、単なる人気取りではないのか。
あるいは、橋下徹大阪市長の「大阪維新の会」などと手を組むための方便ではないのか。
小沢氏は政治資金をめぐる刑事裁判の被告である。
一審判決は無罪だったが、国会や国民に対するいっさいの説明責任から逃げ続けている。
けじめをつけないまま、新党の党首として政治の表舞台に立つ。私たちはそもそも、そのことに同意することはできない。