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厚生年金に上乗せする企業年金と同じような制度が、国家公務員にも必要か。政府の有識者会議が報告をまとめた。公務員の共済年金には「職域加算」という上乗せがあるが、共済と厚生[記事全文]
印刷工場で働いて胆管がんになった人はいないか。患者を早く見つけて治療するとともに、再発防止の対策を急ぐべきだ。大阪府の印刷会社で12人、宮城県の印刷会社で2人、胆管がん[記事全文]
厚生年金に上乗せする企業年金と同じような制度が、国家公務員にも必要か。政府の有識者会議が報告をまとめた。
公務員の共済年金には「職域加算」という上乗せがあるが、共済と厚生年金を一元化する法案が成立すれば、2015年に一元化と同時に廃止される。
報告書は、その後も何らかの上乗せが必要だという方向性を打ち出した。
人事院によると、従業員50人以上の企業では、6割近くに企業年金制度がある。公務員には要らないとは言えまい。
ただ、今回の検討は官民格差の是正が狙いだ。民間で主流となっている制度に合わせることが求められる。
その点で、今回提案された制度には問題がある。
新制度案では、退職一時金と上乗せ年金の掛け金について、雇い主である国が支払う額は、民間企業の平均と同じにする。ここまではいい。
ところが、「公務員の相互救済」という理屈で、公務員本人からも同額の掛け金を集め、共済組合が一体的に運用し、年金給付にあてる。
民間では「掛け金を出すのは事業主のみ」が8割を占める。もし、積立金の運用がうまくいかず、約束した給付に足りない場合、従業員に追加負担を求めることは難しいからだ。
この結果、雇い主の拠出が同額の場合、本人拠出がある分、公務員の上乗せ年金は民間と比べて倍になる。会社員が同じ額の年金を確保しようとすれば、自己責任で資金を運用しなければならない。
さらに問題なのは、上乗せの半分を終身年金にする点だ。民間の企業年金は有期が主流で、終身は4割足らずである。
資金運用や支給期間の予測が外れた場合、国が追加拠出を迫られる懸念も残る。
新制度の必要性について報告書は「公務員の規律を維持するため」とし、「士気向上、公務の能率的運営」を強調する。
だが、そもそも年金一元化の狙いは、官優遇の批判に応えて官民の制度をそろえることだったはずだ。「公務員の相互救済だから、一般的な企業年金と違ってよい」という説明では、理解は得られないだろう。
これからの日本社会は、公的な仕事を、公務員だけでなく、民間と連携しながら行う場面が多くなる。
官民の違いが「優遇」と解され「格差温存」と批判される。そんな余地はない方が国民相互の連帯感が高まり、公務員も仕事がしやすいのではないか。
印刷工場で働いて胆管がんになった人はいないか。患者を早く見つけて治療するとともに、再発防止の対策を急ぐべきだ。
大阪府の印刷会社で12人、宮城県の印刷会社で2人、胆管がんの患者が見つかったのがはじまりだ。この事態をうけて、厚生労働省が全国で約560カ所の事業所を調べたところ、東京都や静岡県、石川県でも、患者が1人ずつ出ていることがわかった。
今回の調査では新たな患者の発見は少なかったため、厚労相は「あまり多くの広がりがなかった」と述べた。
だが、政府がつかんだ17人のうちでも、すでに8人が亡くなっている。特定の地域の問題でないこともはっきりした。
全国で約1万7千ある印刷所には小規模のところも多く、実態をつかみにくい。まだ見つかっていない患者がいる可能性もある。把握を急がなければならない。
胆管がんは50歳以上に多い。だが大阪の事業所では20〜40代の若さで発症していた。
今のところ、原因として考えられているのは、印刷機のインキを拭き取るときに使う洗浄剤に含まれる「1、2ジクロロプロパン」や「ジクロロメタン」などの有機溶剤だ。
これまでの調査で、大阪と宮城の事業所では、風通しの悪い屋内の作業場所で、こうした物質を大量に使っていたことがわかっている。
厚労省は今後、印刷業以外での発症例を調べて、印刷業の場合と比べる。動物実験もして、胆管がんと環境による要因との関係を調べる。
疫学調査と呼ばれるこうした作業に企業も協力し、労働環境の改善に役立てるべきだ。
胆管がんは、胆汁を十二指腸に運ぶ管にできる。自覚症状がないことが多い。超音波検査でわかり、できるだけ早く見つければ外科手術で治療できる可能性がある。
患者が多く出た職場では、従業員や退職者が発症していないかの検査も必要だ。
印刷現場で働いたことのある人の間で不安が広がっている。厚労省は専用の相談窓口を12日から開く。不安にきちんと答えられる態勢を整えるべきだ。
今回の調査で、中毒を防ぐために排気装置を設けるなどの規制を受ける物質を使う事業所のうち、規則に違反するところが8割近くもあった。
働く人の健康を守るために、仕事場で化学物質がどのように使われているか、再点検する必要がある。