HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 38589 Content-Type: text/html ETag: "9313de-22bd-e1655500" Cache-Control: max-age=2 Expires: Tue, 10 Jul 2012 02:21:12 GMT Date: Tue, 10 Jul 2012 02:21:10 GMT Connection: close
朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
|
生まれてきた新しい命は、それ自体が未来そのものだ。「どの社会にとっても、赤ん坊にミルクを与えること以上に素晴らしい投資はない」と、第二次大戦中のラジオ放送で英首相チャーチルは述べたという。だが、ゆりかごで安らかに眠れぬ子が、世界に多くいる▼戦乱で荒廃したアフガニスタンを支援する国際会合が東京であった。かの国では、5歳未満の乳幼児の4人に1人が命を落とす。その影響もあろう、平均寿命は44.6歳でしかない。どちらも世界で最悪に属する数字である▼古くから列強の軍靴に踏まれた歴史を持つ。9・11までは、しばし世界から忘れられたような国だった。テロの後はアフガン戦争が起きた。だが、間もなく世界の目はイラクへ移る。関心の薄れる中、戦火は国土と人の心を荒(すさ)ませた▼テロが頻発し、汚職がはびこり、麻薬栽培は広がった。国づくりの礎(いしずえ)になる教育もおぼつかない。撤兵を決めたオバマ米大統領の言う「長い戦争の責任ある形での終わり」から、現状はほど遠い▼「埋められたのが地雷ではなく、小麦の種であったなら」「米軍が爆弾でなく、本を落としていたら」――。この国で映画を撮ったイラン人監督モフセン・マフマルバフ氏が述べた言葉を、前に引いたことがある▼貧困と無知がテロと暴力の温床になる。武器による腕力より、社会を変えるには柔らかい支援こそ大切、と読める。先は遥(はる)かに遠いけれど、荒野が緑に変わるときを信じたい。手助けを途切らすことなく。