HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 51453 Content-Type: text/html ETag: "2f4fb8-1796-4c43faaa6c492" Expires: Sat, 07 Jul 2012 20:21:14 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 07 Jul 2012 20:21:14 GMT Connection: close 取り調べ可視化 検証結果を制度論議に生かせ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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取り調べ可視化 検証結果を制度論議に生かせ(7月8日付・読売社説)

 最高検が、昨年3月以降、全国の地検で試行を重ねてきた取り調べの録音・録画(可視化)の検証報告をまとめた。

 浮かび上がった成果と弊害をしっかり分析し、刑事司法の新たな制度作りに生かすことが肝要だ。

 元厚生労働省局長が無罪となった郵便不正事件を巡る大阪地検特捜部の不祥事を受けて実施した。地検特捜部の扱う独自捜査や裁判員裁判の事件約2000件を対象とし、うち約440件では全過程を録音・録画した。

 検証報告が指摘した可視化の成果の一つが、取り調べる検察官の言葉や態度が丁寧になった点だ。容疑者が実際に語った表現を用いて供述調書を作成する姿勢も顕著に見られるという。

 裏を返せば、これまで、検察官による供述の押しつけや調書の“作文”が、少なからずあったということだろう。

 否認から自白に至る過程を音声や映像で記録するため、供述の任意性が客観的に証明できるとも指摘している。

 密室という状況が、検察官の強引な取り調べにつながっていたことは否定できない。不正な捜査を防ぐために、可視化は有効な手段であることが今回の試行で裏付けられたと言えよう。

 現在、議論の焦点となっているのは、取り調べの全過程を録音・録画するのか、それとも一部にとどめるのか、ということだ。

 日本弁護士連合会などは、「一部の可視化では検察官の都合のいい部分しか記録されず、冤罪(えんざい)の原因にもなりかねない」として、全過程の可視化を主張している。

 一方、検察では全過程の可視化に対する拒否反応が強い。カメラを意識した容疑者から供述を得られない恐れがあるからだ。今回の検証報告でも「録音・録画されているので言いにくい」と自白を拒むケースがあったとしている。

 事件を着実に解決し、治安を守ることが捜査機関の第一の使命である。容疑者から供述を引き出せず、犯罪の解明ができなくなることは避けねばならない。

 欧州では全過程の可視化を制度化している国が多い。米国は州によって可視化の範囲は異なる。ただ、欧米に共通するのは、可視化だけでなく、おとり捜査や、罪を認めれば刑を軽減する「司法取引」も導入されていることだ。

 検証報告は、可視化の法制化を議論している法制審議会に提出される。海外の事例も参考に検討を重ねてもらいたい。

2012年7月8日01時13分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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