HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 51064 Content-Type: text/html ETag: "a35ae-1781-4c42bb3b258ed" Expires: Fri, 06 Jul 2012 22:21:10 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 06 Jul 2012 22:21:10 GMT Connection: close 整備新幹線 3区間の着工をなぜ急ぐのか : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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整備新幹線 3区間の着工をなぜ急ぐのか(7月7日付・読売社説)

 建設財源や事業の採算性を考慮すれば、優先度の高い公共事業とは思えない。あまりにも拙速で疑問が残る決定だ。

 政権交代で事実上、凍結されていた整備新幹線の未着工区間について、国土交通相が建設を認可した。北海道・新函館―札幌、北陸・金沢―敦賀、九州・諫早―長崎の3区間である。

 政府・与党が昨年末に一転、着工方針を決め、投資効果を審査した国交省の審議会がゴーサインを出したことを受けたものだ。

 沿線の自治体や経済界は、新幹線を地域活性化の起爆剤と期待している。だが、必ずしもバラ色の展望が開けるとは言い難い。

 3兆円にのぼる事業費の7割程度は、国と自治体が負担する。

 国交省は1年当たりの事業費を抑えるために通常より工期を延ばす。羽田国交相は「時間をかけて整備することで、財政規律に配慮した」と説明した。

 その結果、開業は九州10年後、北陸14年後、北海道に至っては24年後と大幅にずれ込む。

 単純計算でも、国と地方は20年以上にわたり年1000億円の巨費を投じ続けることになる。

 工期が長引けば、建設費が予定通りに収まる保証はない。かつて長野新幹線・高崎―長野間の費用が当初計画の1・4倍に膨らんだことは苦い教訓だ。

 地元にとっては、新幹線と並行して走る在来線の扱いも難しい。第3セクターなどに運営が委託されるが、採算確保は厳しく、運賃の値上げは避けられまい。

 そもそも開業後の収支見通しが甘過ぎるのではないか。所要時間短縮で利用者が増えると試算したが、全体の投資効果は事業費をわずかに上回るに過ぎない。

 参入が相次ぐ格安航空会社は首都圏、関西圏と札幌、福岡などを超低価格で結ぶ。この影響や競争激化も考慮していない。

 民主党政権は公共事業予算の削減を掲げるばかりで、事業の「選択と集中」について明確な方針がない。それが問題だ。

 最も重要なのは、限られた予算を必要な事業に効率的に投入することだろう。地方へのバラマキ色が強い新幹線の着工を急ぐことは本末転倒である。

 むしろ、高度成長期に造られ、老朽化したインフラの維持・更新が緊急の課題だ。50年間で190兆円の費用が必要とされる。放置すれば、古い橋や道路が壊れ、日常の生活にも支障が出よう。

 だからこそ、不要不急の新規事業は切り込まねばならない。

2012年7月7日01時23分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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