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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」は、遊覧飛行で眺めるほかない。人の目の高さからは浅い溝が走るだけで、何を描いたものか分からないそうだ。世には大きすぎて見えないものがある▼万物に質量を授けるヒッグス粒子が見つかったと聞いて、ついにやったかと感涙にむせぶ人は珍しい。「世紀の大発見」はえてして我らの理解を超え、その大きさを知るのは後世になる▼英国のヒッグス博士(83)が半世紀前に予言したこの粒子。宇宙誕生の瞬間、好きに飛び回る他の素粒子に水あめのように絡み、全体を落ち着かせたとされる。その動きにくさこそが質量だ。鈍重になった素粒子たちは寄り集まり、水素などの原子、星や生命を生んでいく▼世界の物理学者は、欧州の巨大加速器でヒッグス粒子を探してきた。天地創造に迫る旅である。彼らは「99.9999%以上の確率」でそれらしき粒子を見つけたという。あると予測された17の素粒子は一通り確認されたことになる▼ただ、果てしなき時空を究める上で、この発見は始まりにすぎないらしい。地上絵でいえば、溝の何本かは見つけたが、空から全体像を眺めた者がいない段階か。宇宙の大方は未知の「暗黒」が占めるとされる。探究の旅に終わりはない▼ビッグバンから137億年、まさか「作品」の一つが正体に肉薄してくるとは、「神の粒子」もびっくりだろう。こよい七夕の銀河を思い浮かべて、人類もやるもんだと杯を重ねるのもいい。つまみは粒(つぶ)ウニか何かで。