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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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水が貴重な国際宇宙ステーションでは、3年前から尿を飲料水に再生している。顔をしかめては「地上のぜいたく」と笑われよう。その水で乾杯した若田光一さんは「結構おいしい」と語ったものだ▼海水や雨水より抵抗はあろうが、科学的には何から作っても水は水である。では、何から作っても電気は電気かというと、そんな時代ではない。原子力は、いよいよの時に仕方なく頼る電源になった▼きのうの朝、福井県の大飯原発3号機が発電を再開した。こどもの日の夜に北海道の泊3号機が止まって以来、久々に原子炉がこしらえた電気が送電網を流れている。原発に頼らぬ日本は60日と8時間で幕を下ろした▼世の中はその間、とにもかくにも原発なしで回った。夏の試練に挑まなかったのは、万一の放射能より電力不足を政府が恐れたためだ。冷房の風、照明の色に違いはない。ともすればまた、原発頼みが社会の習い性になりかねない▼官邸を囲んだ怒りを聞くまでもなく、民意は脱原発にあろう。片や株主総会を見る限り、電力会社の意識は「動かすほどもうかる電源」のままらしい。地元経済の原発依存も変わらない。何ごともなかったように再稼働が続いては、福島の教訓が泣く▼あすは二十四節気の小暑(しょうしょ)、節電の正念場が近い。宇宙と違い、選択肢がいくつかある地上で暮らす私たちである。せめて、原発を動かす必要はなかったと、数字で示したい。誰も顔をしかめない「安らぐ電気」だけで賄える国を目ざして。