HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 52445 Content-Type: text/html ETag: "a61b49-3985-f18d1e00" Expires: Wed, 04 Jul 2012 03:21:01 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 04 Jul 2012 03:21:01 GMT Connection: close
朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
|
関西電力・大飯原発の再稼働に、多くの人々が首相官邸前や原発周辺などに集まって反対の声を上げた。官邸前のデモについて野田首相は、「大きな音がしますね」と漏らしたという。[記事全文]
太陽光や風力など自然エネルギーによる電力を、電力会社が買い取る制度が始まった。日本の自然エネルギー発電量は、水力を除くと、全体の1%でしかない。資源を輸入に頼らず、温暖[記事全文]
関西電力・大飯原発の再稼働に、多くの人々が首相官邸前や原発周辺などに集まって反対の声を上げた。
官邸前のデモについて野田首相は、「大きな音がしますね」と漏らしたという。
賛否が分かれる問題では、どちらを選んでも反対の声は上がる。いちいち耳を傾けていたら物事を決めたり、進めたりできない。人々の声を音と表現する背景に、そうした意識があるなら、思い直してもらいたい。
党派に属さず、これまでデモや集会に参加したこともない。参加者にはそんな普通の生活者が多い。幅広い層が瞬時に呼応して集まり、ゆるやかにつながる。米国や中東でも見られたネット時代ならではの現象だ。
思いは真剣だ。2歳の子を抱いて福井県おおい町の反対行動に加わった滋賀県の女性(43)は「いてもたってもいられずに来ました」と話した。
日本ではなりを潜めていた大規模デモや集会が、福島第一原発の事故後に相次いでいる。それは、選挙を通じた間接民主主義が民意をきちんとくみとれない現実を映し出してもいる。
「誰だって機動隊と向き合いたくなんかありません」と、官邸とおおい両方に行った大学生の女性(19)。「関西電力や首相と直接話す機会があれば、みんなそちらを選びます」
大阪市と東京都の議会は、原発の是非を問う住民投票の条例案をあっさり否決した。永田町では2大政党がともに再稼働を支える側にいる。そんななか、多くの人々が自分たちの意見が行き場を失わないよう、街頭に集まり、声をあげている。ルールを守れば、デモも集会も民主主義への大事な参加方式だ。
それを、政治家や省庁が相変わらず「反対のための反対」としか見ないなら、政治や行政への不信は増幅されるだろう。
原子力政策で国民的論議をめざす野田政権にとって、「音」ではすまない動きが今、目の前で起きている。むしろこの動きを、既存の政治回路ではとらえ切れない声を直接聴く仕組みづくりにつなげるべきである。
反原発の側も、その動きを実際の政策の変化につなげる試みを強めてはどうだろう。
「原発停止で電気料金があがっても、これくらいなら受け入れる」「節電をもっと進めるから、リスクの高い原発から廃炉に」といった話を、地域や集会などでもっと積み重ねる。その成果を束ねて、政府や電力会社に異論の声を届ける。
そうしてこそ、声は、政策への影響力を高められる。
太陽光や風力など自然エネルギーによる電力を、電力会社が買い取る制度が始まった。
日本の自然エネルギー発電量は、水力を除くと、全体の1%でしかない。資源を輸入に頼らず、温暖化防止にもなる電源は、脱原発依存を進めるうえでも重要だ。新制度をテコに普及を急ぎたい。
買い取り価格は電源ごとに毎年見直されるが、一度決まれば10〜20年保証される。初年度は1キロワット時42円の太陽光など全体的に高めの設定だ。
高すぎるとの声はある。ただ参入企業を増やすには、一定の利益が確保できるようにしなければならない。日本の取り組みの遅れを考えれば、やむをえない面がある。
実際、ここにきて事業者の参入が相次いでいる。今年度中に250万キロワット分の発電設備が増える見通しだ。
もちろん、細心の注意を払う必要がある。買い取りコストは消費者が負担するからだ。
料金への上乗せは、全国一律で1キロワット時あたり月0・22円。月7千円の電気代を払っている家庭では、家庭用太陽光の買い取り分も含めて100円前後の負担になる。発電量が増えるほど上乗せ額も増える。
原発を利用せずにすむなら、多少高くても自然エネルギーを選ぶという消費者も少なくないだろう。だが、買い取り価格が必要以上に高止まりし、消費者の負担感がつのれば、制度自体が行き詰まる。
先行する欧州も、この点では試行錯誤だ。政府は先行例から学びつつ、普及の度合いや技術革新による発電コストの低減などを見て、柔軟に価格を見直していく必要がある。
自然エネルギーの普及には、送電線と配電設備の増強や広域運用も不可欠だ。
風力の適地である東北や北海道では、送電網の限界から風力発電の買い取り枠が埋まりつつある。これでは、せっかくの潜在資源を生かし切れない。
設備の増強には多額の費用がかかる。送電網の広域運用につながる電力改革を進めるとともに、積極的な投資を促す仕組みを官民で考え、公共財としての送電網整備を急がなければならない。
自然エネルギーは比較的少ない資本で取り組める。基金を設立して風車などを共有したり、組合組織による「市民発電所」を運営したりと、地域単位での工夫も可能だ。「屋根貸し」などのビジネスも生む。
制度をうまく活用し、新しいエネルギー社会を築こう。