HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 01 Jul 2012 23:21:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:EU首脳会議 危機収束に一歩だが:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

EU首脳会議 危機収束に一歩だが

 国際社会から厳しい目が注がれた欧州連合(EU)首脳会議は、銀行への直接資本注入など危機対応で一歩前進した。しかし、まだ不十分だ。約束を着実に実行していかなければ逆戻りしかねない。

 尻に火が付いた落第寸前の学生が、追試で周囲が驚くほどの得点をあげた−事前の予想を覆す合意がみられた首脳会議は、たとえればこんな感じだろうか。

 これまで欧州の対応は先送りの連続だった。ギリシャに端を発した債務・金融危機はすでに二年以上に及び、危機はとうとうユーロ圏で経済規模が四位、三位のスペイン、イタリアまで迫った。世界恐慌の引き金になりかねないと、国際社会は一刻も早い収束の約束を突きつけた。だが、これまで何度も失望させられた市場は、今回も「決められない欧州」になるのではと事前の期待は低かった。

 それだけに、いくつかの踏み込んだ合意は市場に好感されたように評価されていいだろう。危機対応の安全網である欧州安定メカニズム(ESM)が、経営不安の銀行に直接資本注入できるようにしたのは、その代表である。

 これまでだと、銀行への資本注入は政府機関を経由する仕組みだったため、政府の債務が増えてしまう問題があった。スペインで銀行と政府財政の危機連鎖が起きたのはこのためで、その悪循環を断ち切ることが期待できる。

 同時にユーロ圏の銀行監督の一元化が合意され、圏内のすべての銀行の経営に介入する権限をもつようになる。ESMが加盟国の国債を購入することも認め、これによって南欧の国々が背負いきれない債務をユーロ圏全体で分かち合う体制に前進するだろう。預金保険制度の統一は検討課題として残ったが、ユーロ圏の安定のためにはぜひとも必要だ。実現に向けて具体化の協議を急ぐべきである。

 フランス大統領選やギリシャ国会の再選挙結果も踏まえ、緊縮一辺倒から成長戦略や雇用重視へとかじを切ったのも、時宜を得た対応といえる。若者らの失業対策は急務であり、千二百億ユーロ(約十二兆円)の成長投資はうまく活用されなければならない。

 ただ、命題である欧州統合の将来像は今回も示せなかった。通貨統合の先にある財政統合に向けた欧州共同債導入などは中長期的な課題として先送りした。「今回は落第を免れても無事修了証を手にできるかはわからない」−市場はそう見ているに違いない。

 

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