HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 37663 Content-Type: text/html ETag: "b8c158-201a-eb834700" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sun, 01 Jul 2012 22:21:15 GMT Date: Sun, 01 Jul 2012 22:21:10 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年7月2日(月)付

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 蝶(ちょう)を花に、花を蝶に見立てる趣向は国を問わないようだ。フランスの詩人ネルヴァルは蝶を「ひらひらとぶ、茎のない花」と表した。俳諧の始祖とされる室町後期の荒木田守武は〈落花枝にかへると見れば胡蝶(こちょう)かな〉と詠んでいる。散る桜が枝に帰ると思ったら、おや、蝶でしたと▼いまの季節なら、蝶を思わせる花はガクアジサイだろうか。小花が集まって咲く縁(ふち)を、蝶が舞うように装飾花が取り囲む。見事な咲きぶりの数株が近所の公園にあって、雨下、青や白の「蝶」が群れ飛ぶさまが目に鮮やかだ▼本物の蝶も負けてはいない。拙宅の鉢植えミカンには、今年も柚子坊(ゆずぼう)がお出ましだ。アゲハチョウの幼虫の芋虫をそう呼ぶ。枝はだいぶ裸にされたが、もう3匹ほどが飛びたった。アゲハには梅雨の晴れ間がよく似合う▼東京に住む関洋さん(61)から、『都市蝶』という小さな写真集を送っていただいた。23区内で撮りだめた蝶は53種を数える。摩天楼ひしめく都心でも、ひとつかみの緑があれば命をつなぐ。そんな姿が光って見えるそうだ▼ビル群を背に黒いジャコウアゲハが飛ぶ1枚など、孤高と崇高さえ感じさせる。巨大と微小。されど対峙(たいじ)してゆるがず。自然の造物の優美にコンクリートは色あせる▼〈華麗なる翅(はね)もて余し梅雨の蝶〉田辺レイ。早いもので、暦は今年の折り返しを過ぎた。とはいえ政治も経済も梅雨空のまま雲は低い。雨宿りの蝶のように羽をたたむ停滞感。野山を越えゆく夏蝶に、早く姿を変えたいが。


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