HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 01 Jul 2012 03:21:09 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:週のはじめに考える 中ロ結束に潜む影:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

週のはじめに考える 中ロ結束に潜む影

 中国とロシアが結束を強めています。主権や人権などで欧米と考えの違う両国の利害が一致しました。大国として世界の平和に責任を果たしてほしい。

 「共産主義的煮込み」と呼ばれる料理があります。牛肉とジャガイモの煮込みで、中国語なら「土豆焼牛肉(トゥドウシャオニュウロウ)」。それが、かつては中ソ対立を象徴する料理でした。

 ソ連共産党のフルシチョフ第一書記が、このようなことを言ったといいます。「国民みんなが肉じゃがを食えるなら社会主義の高級段階。共産主義を近く実現できる」と。中国の共産主義を「水っぽい」と皮肉り、経済基盤が固まっていないと突き放したのです。

◆シリア制裁反対で一致

 毛沢東は「東風は西風を圧す」と東側陣営の優位を語り、フルシチョフの平和共存路線を暗に批判しました。中ソ対立は根が深く、イデオロギーだけでなく、外交戦略、国境をめぐる対立に広がりました。一九六九年には、国境東部の領有権をめぐり大規模な武力衝突まで起こりました。

 中国が改革開放に踏み切り、八〇年代には関係改善に向かいました。ソ連もゴルバチョフ書記長がペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)を打ち出し、八九年に中ソは関係を正常化させました。

 皮肉にも、その二年後にソ連は崩壊してロシアが生まれ、二〇〇八年に長年のトゲであった国境問題を解決しました。

 そんな歴史を持つ中国とロシアの緊密化が最近、目立ちます。六月の上海協力機構(SCO)首脳会議で採択した北京宣言では、シリア問題で「強制的で性急な権力移行や一方的な制裁に反対」とうたいました。

 ロシアはシリアを中東の外交拠点の一つとしています。中国は欧米の干渉で独裁政権が倒れるなら、自国の民主化運動に影響するのではないかと懸念しています。

◆自国への干渉を懸念

 宣言は、米国による欧州へのミサイル防衛(MD)計画の推進にも警戒感を示しました。SCOは軍事的にも存在感を高めており、アジア太平洋重視にかじを切った米国に対抗し、中ロが接近したという構図です。

 SCOはアフガニスタンがオブザーバー参加することも認めました。米国の撤退を見越して、中ロが主導する多国間の枠組みに、アフガンを取り込もうという意図が感じられます。

 中ロの接近は、外交や軍事で利害が一致したからです。民主主義や人権問題などで欧米との間に考えの違いがあります。それを共有し、スクラムを強めました。他国から干渉されずに内政を進めることが民主主義より優先する、というのが中ロの政治の基本です。

 世界は冷戦時代の米ソ対立の二極構造から、米国一極支配を経て、中国やロシア、その他の新興国の台頭による多極化へと変化しています。だからこそ、国連安保理常任理事国である中ロが果たすべき役割は極めて大きいのです。

 懸念されるのは、この二大国が世界の平和や繁栄のために、自国の体制や経済発展を犠牲にしてまで責任を果たすだろうかということです。中ロは国連安保理で二度にわたって拒否権を使い、欧米主導のシリア制裁決議案を葬りました。「自国利益の優先だ」との批判も聞かれました。

 他の常任理事国がすべて立派だとは言いません。国連総会は人道犯罪を防ぐ行動などには拒否権を控えるよう勧告を試みました。常任理事国はそろって反対し、勧告決議案は撤回されました。

 特権を守ろうとする大国の身勝手ではないでしょうか。常任理事国の地位は、世界の平和に対する大きな責任と表裏一体であることを肝に銘じてほしいのです。

 とりわけ、人権や民主主義より自国の体制を優先させる中ロのやり方や、対欧米の戦略優先で結びつきを深めることには、危うさを感じます。世界共通の利益に目が向いているでしょうか。結束に潜む影の部分も大きいのです。

 中国は最近、アジアの海洋進出で強権的な姿勢が目立ちます。返り咲いたとはいえ、反プーチン運動も起こり、大統領の足元は盤石ではありません。独裁の強化も懸念されます。表面的には結束しても、ロシアは中国の台頭に警戒感を抱いているともいわれます。

◆大国らしいふるまいを

 六月の主要二十カ国・地域(G20)首脳会合で、中ロとも新興国と連携する姿勢を鮮明にしました。人権や民主を批判する欧米先進国に対抗する応援団づくりであるなら、方向が違うでしょう。

 国際社会のルールを共有できることは、指導的な大国の条件です。中ロには、多極化する世界の重要な一極として、大国にふさわしい自覚と行動を期待します。

 

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