HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 51990 Content-Type: text/html ETag: "b87d14-39ac-27662840" Cache-Control: max-age=1 Expires: Sat, 30 Jun 2012 00:21:03 GMT Date: Sat, 30 Jun 2012 00:21:02 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:社説
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2012年6月30日(土)付

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大阪政治条例―基本的人権を制約する

政治活動をした職員はバンバン懲戒免職にする――。橋下徹大阪市長はいう。言葉どおり、そうした職員を原則として免職などにする「職員の政治的行為の制限に関する条例案」を市議会[記事全文]

電力の選択肢―熟議を生かす工夫を

新たなエネルギー計画の策定に向けた選択肢を、政府が示した。「国民的議論」を経て、8月末までに方針を決める。福島の原発事故を経験した日本は、どのようなエネルギー社会をつく[記事全文]

大阪政治条例―基本的人権を制約する

 政治活動をした職員はバンバン懲戒免職にする――。

 橋下徹大阪市長はいう。言葉どおり、そうした職員を原則として免職などにする「職員の政治的行為の制限に関する条例案」を市議会に提出する。

 条例案では、制限する政治的行為を具体的にあげている。政治団体の機関紙の発行や配布をしてはならない。集会で拡声機を使って政治的意見をいうこともだめ。政治的目的をもって演劇を演出するのも禁止。

 勤務中か否か、公務員とわかる姿かどうかを問わず、すべての活動をしばりかねない。

 集会や結社、表現の自由は、憲法が保障する民主主義の基本だ。だから政治活動の自由も保障される。行政の中立を損なわない範囲での公務員の活動も、自由であるべきだ。

 大阪市の条例案は、公務員の私的な生活領域にも踏み込むものであり、賛同できない。

 国家公務員の特定の政治活動には法で刑事罰があり、地方公務員にはない。橋下氏は当初、条例に同じような規定を入れようとしたが、政府が「地方公務員法に違反する」との答弁書を閣議決定したため、断念した。

 しかし、この答弁書で政府は「地方公務員の地位から排除すれば足りる」と、地公法ができた時の経緯を示したため、免職までができる条例案にした。

 規制は最小限にとどめるという精神を取り違えている。

 国家公務員法の罰則規定は、1948年、連合国軍総司令部(GHQ)が労組の活動を封じるために、当時の内閣につくらせた。今は、その規定の方が、時代にあわなくなっている。

 むろん、公務員は自分の政治的な信条で行政を左右してはならない。しかし休みのときに、一般の職員がデモや政治的集会に私服で出かける。それは、本人の判断ですることだ。

 社会の情勢や国民の考えは、大きくかわった。先進国ではごく限られた行為だけが規制されている。今さら戦後の混乱期のような考えに戻ることはない。息苦しい制度によって社会の幅広さや活力をそぐ害が大きい。

 橋下氏が代表である大阪維新の会は、次の衆院選で全国に候補者を立てるという。脱原発や大阪都構想に共感した職員が、休日に街頭署名や集会を企画したら免職にするのだろうか。

 大阪市では長年、役所と組合のもたれあいが言われてきた。昨年の市長選では前市長を職員労組が支援し、勤務中に職場を抜けて政治集会に出ていた職員もいた。このような問題は現行法で個別に正せばいい。

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電力の選択肢―熟議を生かす工夫を

 新たなエネルギー計画の策定に向けた選択肢を、政府が示した。「国民的議論」を経て、8月末までに方針を決める。

 福島の原発事故を経験した日本は、どのようなエネルギー社会をつくるべきか。生活や経済を支えるうえでも、将来世代への責任を果たすうえでも、極めて重要なテーマだ。

 人任せにせず、さまざまな場で議論を深めよう。

 選択肢は三つだ。2030年時点で発電量に占める原発の比率をもとに組み立ててある。

 私たちは、できるだけ早期に原発をゼロにすべきだと主張してきた。世論調査でも、多くの人が原発依存度を減らすことに賛成している。

 だが、どんなスピードでどこまで減らすか、原発に代わる電力として何を重視するかは、意見が分かれるところだ。

 政府は、国民的議論の場として意見聴取会やパブリックコメントなどの準備を進める。注目されるのは「討論型世論調査」と呼ばれる新しい手法だ。

 全国から無作為に選んだ人たちに予備的なアンケートをし、回答者から参加者を募る。参加者は基礎的な知識を学び、議論したうえで、もう一度アンケートに答える。学習や討論による意見の変化を「成熟した世論」として、政策形成に役立てようという試みだ。

 意見の異なる市民同士が実際に向き合い、お互いの考えを理解しあいながら合意点を探る。「原発維持」か「脱原発」かに二極化しがちな状況を乗り越えるうえでも意義は大きい。

 問題は、「はじめに日程ありき」で、与えられる時間が短すぎることである。

 本来は、討論会での資料一つとっても入念な準備が必要だ。運営者は中立性が保証されなければならない。議論の進行役にも習熟がいる。専門家から問題点を指摘する意見書も出た。

 政府はこうした声を採り入れて改善をはかってほしい。

 政府の方針は8月末に決定するが、エネルギー政策は今後も議論を深める必要がある。市民による熟議の枠組みは継続していくべきだ。

 議論の場や参加者が増えれば、電気の使い方や地域独自の戦略など、新しいアイデアが生まれるかもしれない。ノウハウを積み重ね、他の政策にも広げてはどうだろう。

 不信や対立は簡単に生じる。民主主義が本当に試されるのは、立場の違いを越えて現実的な解を出す作業だ。政治の閉塞(へいそく)感が漂うなか、新しい試みを現状打開の一歩にしよう。

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