百十八基ある美しい花こう岩の碑には、約二十四万人の名前がびっしりと刻み込まれている。太陽の下、碑の前に立ったことがある。無数の声が迫ってくるようで立ちすくんだ▼沖縄戦から五十年を機に建設された沖縄県糸満市摩文仁の「平和の礎(いしじ)」。民間人や軍人、国籍の区別なく、戦没者の名が刻まれている▼<礎に刻まれた人々の/届けたかった思い/叶(かな)えたかった願い 私たちが届けよう/私たちが叶えよう>。きのう、慰霊の日を迎えた沖縄の全戦没者追悼式で詩を朗読した首里高校三年の金城美奈さんは<私たちに必要なことは/あの日を受け止めて語り継ぐこと>と決意を込めた▼「基地負担の早期軽減に全力を尽くし、具体的に目に見える形で進展させる」と追悼式で誓ったのは野田佳彦首相だ。その言葉が掲載された同じ紙面に、墜落事故が続き保革を問わず県民が配備に強く反対している垂直離着陸輸送機オスプレイに関する記事があった▼米国防総省は「極めて安全な運用実績のある高性能機」として、計画通りの配備を日本の防衛省側に伝えたという。負担の早期軽減どころか、さらなる負担の増大ではないか▼二〇〇四年夏、普天間飛行場所属の米軍のヘリコプターが墜落、炎上した沖縄国際大には、焼け焦げた木と傷ついた壁の一部が残されている。こんなモニュメントは、もう増やしたくない。