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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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対テロ戦争の最前線となったアフガニスタンの子どもたちにユニセフ(国連児童基金)が聞いた。最も怖いことは何ですか? 「爆撃と爆発の音」や「銃を持つ男」を抜いて、「幽霊」というのが一番多かった▼それを知った東京のNPOが、子らに「幽霊」の絵を描いてもらった話を、かつて小欄に書いた。黒こげ、血まみれ、飛び出す骨や内臓……。幼い色づかいで表された酸鼻は見るに切なかった。戦火は五感を通して子どもの柔らかい心をえぐる▼アフガンの泥沼はなお深い。そして今、シリアが砲煙の下で血に染まっている。内戦状態の中、武器をつかんだ手が、幼い心はおろか命までもえぐり取っている。小さな骸(むくろ)が横たわる虐殺は人間の所業とも思えない▼相次ぐ虐殺への関与が言われるのは、政府側から武器を与えられた民兵組織だという。一派は「シャビーハ」と呼ばれ、「幽霊」とも訳されるそうだ。だが血も涙もあるはずの、まぎれもない人間の仕業である▼シリア軍も卑劣だ。国連の報告によれば、3月に北部を攻撃した。その際、兵士を乗せたバスの窓に少年少女らを置いて「人間の盾」にしたという。モラルは地に落ち、腐臭を放っている▼例によって国連安保理は役をなさない。ロシアは武器を売り、中国は独裁政権の肩を持ち、思惑と打算で目をつぶる。どうしたら無辜(むこ)の命を守れるのだろう。身勝手な正義と大国のエゴ。はざまで幼い未来が奪われる悲劇は、同じ地球上の現実として、悪夢にすぎる。