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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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モリアオガエルは樹木に泡のような卵塊を産みつける。繁殖地として国の天然記念物に指定されている福島県川内村の平伏(へぶす)沼で、産卵が最盛期を迎えたそうだ。原発禍で避難を強いられた村は、カエルにちなんだ「かえる かわうち」を合言葉に帰村と復興をめざしている▼カラララ・カラララ・クックックッとモリアオガエルは鳴くという。カエル族の鳴き声は擬音が多彩で、たとえば詩人の三好達治は「けりけり」と表した。これは春の初蛙(はつかわず)。同じく那珂太郎氏は夏の合唱を「ぎよぎよ」。俳人臼田亜浪(あろう)に〈けくけく蛙かろかろ蛙夜一夜〉の句がある▼そして「蛙(かえる)の詩人」の草野心平。「けくっくけくっく」と鳴くかと思うと「ぐりけっぷぐりけっぷ」と鳴いて奔放自在だ。川内村を愛し、名誉村民でもあった心平さんに「婆さん蛙ミミミの挨拶(あいさつ)」という短詩があったのを思い出す▼〈地球さま。/永(なが)いことお世話さまでした。/さやうならで御座(ござ)います。/ありがたう御座いました。/さやうならで御座います。/さやうなら。〉▼この世の去りぎわ、命をもらって生かされた天地(あめつち)への、老蛙の素朴な感謝が人間にはこたえる。身一つで命を全うする他の生き物と違い、収奪し、汚染し、破壊して鬼っ子さながら。ひとり人間だけが「直し方の分からないものを壊し続け」ている▼「持続可能」の一語を、リオ+20の会議後も胸に刻みたい。「万物の霊長」と自尊しての勝手放題、そろそろ真に目覚めねば、蛙に合わせる顔もない。