開幕した国連持続可能な開発会議(リオ+20)は「われわれの望む未来」という宣言を出す予定だ。フクシマを経た日本は持続可能な未来を目指して、世界に重いメッセージを伝えなければならない。
一九九二年に開かれた初めての地球サミットは史上最大の国際会議である。四万人が参加し、百三人の首脳が顔をそろえた。ブッシュ米大統領(父)、中国の李鵬首相も姿を見せた。環境の国際会議に本格的な市民参加の道を開いた画期的な出来事でもあった。
地球と地球市民の持続可能な未来のために二十七項目の「リオ宣言」が採択され、気候変動枠組み条約と生物多様性条約が産声を上げた。「環境」という言葉は、ここから世界に広がった。
なぜ、このような盛り上がりを見せたのか。米ソの冷戦が終結し、世界が対立から融和へと、まなざしを移し始めた時だった。地球という人類共通の基盤が強く意識され、地球規模の課題解決へ協力して立ち向かう機運も高まった。
当時十二歳の少女、日系カナダ人のセバン・スズキさんが「直し方のわからないもの(地球)を、これ以上壊し続けるのはやめてください」と訴えた“伝説のスピーチ”は、今も語り草である。
あれから二十年。持続可能な発展を阻む、見えない亀裂は東西ではなく南北に深まった。これまでに大量の資源を消費し、地球環境を酷使しながら繁栄してきた先進国と、これから同様に発展を遂げたい途上国との対立が地球の修理を足踏みさせている。
二児の母になったスズキさんは「今もメッセージは同じ」と嘆く。私たちは直し方のわからないまま、地球をさらに二十年間痛めつけ、命を蝕(むしば)んできたのだろうか。もう“伝説”を乗り越えなければならない時期である。
リオ+20は、そんな二十年を検証し、南北の溝を埋める三度目の地球サミットだ。テーマの「グリーン経済」は資源浪費と自然破壊の上に立つ従来の経済を改めて、限りある資源をむさぼらず、太陽や風など無限に続く自然の恵みを賢く使い、新産業や雇用を生み出そうという考え方だ。
福島の事故を経験し、私たちには持続可能な未来の重さ、大切さが身に染みた。クリーンエネルギーといわれた原発が引き起こす破壊の怖さもだ。グリーン経済への移行には技術革新が欠かせない。フクシマの経験をばねに日本からリオへ変革の意思を伝えたい。
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