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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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「結果的に甘さがあったと言わざるを得ない」。甘かったと素直に言えないのはなぜか。後ろめたい点があると、人は持って回った言い方になるものだ。意のままに使ったつもりの言葉に、本音が透ける▼福島第一原発の事故で、東京電力が最終報告書をまとめた。想定の甘さは認めたが、それを超す津波が原因だと、またぞろ被害者のような筆致である。他方、当時の首相官邸の介入を「無用の混乱を助長させた」と腐した▼「天災が起こし、思わぬ爆発が広げ、怒りっぽい首相がこじらせた悲劇」とでも総括したいらしい。誰よりも事故の近くにいた東電である。真実に迫れるはずなのに自己弁護に熱心なのは、被告人の陳述と思えば合点がいく▼会社は被災者に、役員陣は株主から訴えられている。「正直」すぎては裁判に障るし、下手に責任を認めると税金で助けてもらえないとの腹だろう。被災地の首長は「誠実さや謙虚さがない」「住民への侮辱」と容赦ない▼先日、わが家にも東電から「料金値上げのお願い」が届いた。7月から平均10%強の申請である。家庭向けの販売は全体の4割だが、利益では9割を稼ぎ出すおいしい部門なのだ▼値上げの計算には、止まっている福島第二原発などの維持費、年900億円を含めているという。事故の責任から逃れたうえに、くらしを根こそぎ奪った地でまた原発を動かすつもりなら神経を疑う。ますます離れる世論が見えるだけに、命がけで現場を守る人々が気の毒でならない。