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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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「ハイドランジア=水の器」の属名を持つ花にも、さすがに限度があるらしい。しこたま雨に打たれた道端のアジサイが、やれやれといった顔で残りの風に揺れていた。紀伊半島に上陸した台風4号は、列島を駆け抜けて東北沖に出た▼6月の台風上陸は8年ぶりという。季節外れの暴れん坊に、不意を突かれた思いだ。張り出した太平洋高気圧の縁(ふち)を回るように、続く5号も九州に近づいている。台風と梅雨前線の「共鳴」が怖い▼〈短夜(みじかよ)のあけゆく水の匂(におい)かな〉久保田万太郎。長雨のさなか、明け急ぐ夜に夏が兆す時期でもある。きょうは夏至、昼間が最長になる。東京の日の出、日の入りから計算すると、先ほど明けた夜は9時間25分、一日の39%しかない。札幌では36%だ▼これからは一転、昼の時間が短くなるが、暑さの本番は梅雨明けから。その頃に、寝不足を誘う映像がロンドンから届き始める。「夜」はさらに削られよう。夜更かしのテレビは、照明やエアコンを巻き込み、省エネの努力を試すことになる▼電力不足の心配は、去年の首都圏から関西に移った。五輪の日程などを考えると、やりくりの正念場は立秋あたりになろうか。今年も、節電こそが「最強の発電所」だと実証したい▼6月に台風が襲来した年は、梅雨が早じまいすると聞いた。それだけ太平洋高気圧が強いということだろう。一過の東京は今年初の真夏日になった。水の匂い、猛暑の予感、節電の覚悟。急ぎ足の予告編に、四季の歯車の音を聞く。