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朝日新聞社説をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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とりあえず「始め」の合図はかかった。これを領土問題の打開や、極東での日本とロシアの協力の深化に向けて、建設的で息の長い協議へと進めていかなければならない。プーチン氏がロ[記事全文]
世界の平和維持のため、カネだけでなく人も出す。そのための国連平和維持活動(PKO)協力法が1992年に成立して、今月で20年を迎えた。当時の朝日新聞の世論調査では、自衛[記事全文]
とりあえず「始め」の合図はかかった。これを領土問題の打開や、極東での日本とロシアの協力の深化に向けて、建設的で息の長い協議へと進めていかなければならない。
プーチン氏がロシア大統領に復帰して初めての両国の首脳会談があり、停滞していた領土交渉を再び活性化させることで、野田佳彦首相と合意した。
昨年3月に東日本大震災が起きると、首相だったプーチン氏は液化天然ガス(LNG)の緊急供給などの支援策を打ち出した。今年3月にも「引き分け」などの柔道用語を使い、互いに受け入れ可能な領土問題の解決をめざす考えを示している。
国後(くなしり)島を訪れて日ロ関係を激しく緊張させた前任者のメドベージェフ氏とは対照的だ。
重要課題の極東・シベリアの開発で、資本や技術をとり入れたい。強大化する中国の周辺への影響力を、日本との連携を深めて抑制したい。そんな思惑から対日関係の修正に動くプーチン氏が大統領に戻り、懸案を話しあう環境がようやく整ったということだろう。
ただし、プーチン氏の「引き分け」が何を意味するかは明らかでない。日ソ共同宣言に基づく歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の2島引き渡しを基本とする決着なのか。国後、択捉(えとろふ)2島の帰属問題にまで踏み込む用意があるのか。見方は日本側でもさまざまだ。
じっくりと話し合い、真意をつかむほかない。そのうえで入念な対応策をたて、四島の帰属問題を決着して平和条約を結ぶという、日本側の目標を実現してゆくべきである。
領土問題のほかにも話し合うことは山積みだ。まずアジア・太平洋地域、とくに極東の安定と繁栄のために協力を強めることが大切だ。中国を地域の安定要因としていかに取り込むか、北朝鮮の非核化をどう実現するかが重要な課題になる。
脱原発を進めるためにも、エネルギー協力は役立つ。
現在、両国は極東の液化天然ガスがらみの協力が中心だが、ロシアが提案する天然ガス・パイプラインや送電網の構築を考えてもよい。
だが、領土問題を抱えることがロシアからの供給に不安を呼ぶ。全面的な協力には領土問題の解決が欠かせぬことを、プーチン氏は理解するべきだ。
日本の首相のロシア公式訪問は、03年に当時の小泉純一郎首相がしてから9年も間があいている。不安定な国内政治による短命政権が、首脳外交を貧弱にしている。政権を超えた長期的な対ロ戦略の構築が必要だ。
世界の平和維持のため、カネだけでなく人も出す。そのための国連平和維持活動(PKO)協力法が1992年に成立して、今月で20年を迎えた。
当時の朝日新聞の世論調査では、自衛隊の部隊を海外に出すことに、58%が「憲法上、問題がある」と答えていた。
おそるおそるのスタートだった。それが、18カ国・地域に27の国際平和協力隊を派遣するなかで国民の理解は定着した。憲法の制約下、手堅い働きぶりには国際的な評価も高い。
最近は日本ならではの活動も増えた。大地震があったハイチでは、政府の途上国援助(ODA)や国連資金でがれきを除去し、孤児院を建設した。自前の資金を持ち、部隊に1級建築士など多彩な人材を抱える日本の特性が生きた。
こんな「日本型PKO」をさらに磨き、広げていきたい。
各国に比べ、活動は必ずしも十分とはいえない。5月末現在、日本は南スーダンなど四つの任務に国連要員として488人を派遣しているが、規模では世界で38位にとどまる。
文民警察や選挙監視要員を含め、日本の得意技を生かせる分野を中心にもっと多くの人を出していい。NGOとの連携も強めたい。
日本のPKOは参加5原則、中でも抑制的な武器使用基準のもとにある。
政府は法改正を検討中だ。いまの憲法解釈のもとでは、そう簡単には武器使用基準は緩められない。政治主導の十分な検討が必要だが、現状で満足な活動ができないわけではない。
日本の施設部隊が道路補修などをする一方で他国の歩兵部隊が治安維持にあたるなど、現場ごとに役割分担ができている。
注目すべきは、領土や歴史問題でぎくしゃくしている韓国、中国との間でも、現場での協力が進んでいることだ。
ハイチでは、日韓が共同でがれき除去にあたった。海賊対処法に基づくソマリア沖の活動では、日中印の艦艇がローテーションを組んで、商船の護衛活動の効率化を図っている。
日中韓の3国が力を合わせてともに世界で汗を流す。まだ小さな動きではあるが、それを積み重ねれば、お互いの信頼も深まるだろう。
ODAが減り、国際社会での日本の存在感が薄れつつある。
一方、昨年の東日本大震災では、規律正しい自衛隊員の救援活動に対し、多くの被災者が頼もしさを感じた。
そんな思いをもっと世界と共有したい。