主要二十カ国・地域(G20)首脳会合が欧州に債務・金融危機を早く収束させるよう注文を突きつけた。ギリシャのユーロ離脱が遠のいた今こそ、抜本改革を急ぐ時だ。もう先送りは許されない。
ドイツのメルケル首相は針のむしろに座らされた心境だったろう。G20会合の開幕に合わせたかのようなタイミングで、スペイン国債の利回りが再び跳ね上がり、危機が再燃。ギリシャ、スペインなどの債務国救済のカギを握るドイツに、決断を迫る圧力が一段と強まったからだ。
会合で欧州側首脳は、域内でばらばらの銀行監督の一元化や預金保険制度を共通化する「銀行同盟」の実現努力は約束した。これまでは、国境を越えて活動する銀行の監督責任も、銀行免許を付与した国が負う「母国主義」だった。しかし、多国籍化した銀行も含め、破綻に直面する金融機関が増え、一元化の必要に迫られたためだ。
こうした銀行や預金者を機動的に救済する仕組みは時宜にかなっている。しかし、現在の危機を克服するには、これではまったく不十分である。スペインの危機が、銀行の不良債権と国の財政赤字が共振して深刻化したように、金融部門の強化だけでは問題は解決しない。
何度も指摘してきたように、財政の統合も進めていかなければユーロの信認は回復できない。その第一歩となり得るのは、加盟国が信用を補完し合って財政資金を集めるユーロ共同債であろう。
実現の成否を握っているのはドイツだ。「時期尚早だ」「財政規律が緩むモラルハザードにつながる」と反対姿勢を崩さないのはどうか。国民に根強い反発があるのはわかる。欧州の安全網づくりなどで全体の三割を負担してきたドイツの貢献度は、確かに高い。しかし、ユーロが導入されて以来、その恩恵を最も享受してきたのも間違いなくドイツである。
メルケル首相は長期的な視野で「財政統合、さらには政治統合を目指すべきだ」と語るが、もはや財政統合は具体化に踏み出す時だろう。欧州統合やユーロの意義を国民に丁寧に訴え、ひるむことなく説得することだ。
G20首脳会合が採択する宣言には「欧州危機を封じ込めるため、ユーロ圏各国はあらゆる措置を講じる」と盛り込まれるはずだ。それに対する回答を、ドイツは各国をリードし今月末の欧州連合(EU)首脳会議で示す必要がある。
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