HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 19 Jun 2012 23:21:56 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 万葉歌人の山上憶良は、子煩悩で知られている。<銀(しろか…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 万葉歌人の山上憶良は、子煩悩で知られている。<銀(しろかね)も金(くがね)も玉も何せむにまされる宝子に如(し)かめやも>。有名な歌はどんな財宝でも子どもには勝てない、という子を思う親の心情にあふれている▼まだ、ぬくもりのある愛児を前に、どんなに重い決断だったのだろう。重い脳障害を負った六歳未満の男児が、家族の承諾によって初めて脳死と判断され、心臓と肝臓が十歳未満の子どもに移植された▼両親の談話に胸を打たれた。<本日、息子は私たちのもとから遠くへ飛び立って行きました。このことは私たちにとって大変悲しいことではありますが、大きな希望を残してくれました。息子が誰かのからだの一部となって、長く生きてくれるのではないかと>▼肝臓を移植された女児は、容体が悪化する中、手術が間に合った。「命のリレー」のバトンを受け取った女児の両親はすがるような気持ちだったと思う▼<「ありがとう」という言葉でいいのか…、と、同じ親として考えてしまいます。けれど、感謝以外のなにものでもありません>との率直な表現に全てが凝縮されている▼男児の両親は息子を誇りに思っているという。「これで良かったのだろうか」という葛藤は日々、喪失感が強まるこれからが始まりかもしれない。大切な宝物を失い、他人の宝物を救った人たちが苦しまぬよう、支えてゆける社会でありたい。

 

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