ギリシャ再選挙は緊縮策受け入れ派が勝利し、ユーロ圏離脱に直結する事態は当面免れた。空回りする「統合促進」の掛け声を欧州連合(EU)が具体化できるか、残された時間は僅(わず)かだ。
再選挙までの約一カ月間、ギリシャ世論は揺れに揺れた。
果てしない切り詰め財政と生活不安。悪化する一方の失業率と削減されるばかりの年金支給。低い自殺率で知られる国で、危機発覚以来相次いで自殺者が報じられる現状を見るだけでも、国民が直面している苦境の深刻さが伝わる。
そのなかで、緊縮政策の受け入れこそ唯一の選択肢と主張した新民主主義党が第一党となった。政治の空白はもう許されない。新政府下での改革継続に期待したい。
前回旋風を巻き起こした急進左派連合が第一党の座を獲得できなかったのは「緊縮は拒否。でもユーロ圏には残留」という二律背反の主張が最後まで説得性を持ち得なかったことが最大の原因だろう。煉獄(れんごく)は続くが対案のない地獄よりはまし。有権者の窮余の判断かもしれない。新政権が発足しても、スペイン、イタリアと続く信用不安は払拭(ふっしょく)しきれず、欧州にとっての煉獄も続くだろう。
統合を後押しする動きがないわけではない。今月初旬のアイルランド国民投票では、EUが合意したユーロ救済の枠組みに対して約60%の国民が支持を表明した。スペインの金融不安に対しては、EUが速やかな支援枠で合意した。
しかし、アイルランド国民投票は国際金融市場から無視に等しい評価しか得られず、スペイン支援に至っては、かえって財政負担が高まる懸念から国債利回りが上昇する結果を招いている。
銀行同盟や財政統合など、EU首脳が繰り返す「政治的意思」のメッセージに実効性を与えるためには、個別の政治的な動きを欧州統合の発足以来の大きな流れに位置付けて語る政治の指導力が欠かせない。
メキシコの二十カ国・地域(G20)サミット、今月末のEU首脳会議、来月発足する欧州安定メカニズム(ESM)などの日程を踏まえ、ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事は、ユーロの帰趨(きすう)はここ三カ月がタイムリミット、と述べている。
第二次ギリシャ支援後に訪れた一時的な緊張緩和の機会を、EUは有効に生かせなかった。再度好機を逸すれば、まさに命取りになることを市場は警告している。
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