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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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文字は書くより打つものとなり、ペンダコは死語になりつつある。それでも職業ダコは「その道一筋」の勲章である。右利きのバーテンダーなら、シェーカーを支える右手小指が硬くなると聞いた。修業中は何度も皮がむける▼野田首相の右手にタコがあるなら、なりふり構わず消費増税のドアを叩(たた)き続けた証しである。最後は扉をこじ開けんと自民、公明両党に譲歩を重ね、一体改革の修正合意を得た。民主党のマニフェストは見る影もない▼メキシコに赴いた首相は、国際会議に集中する心身ではなかろう。丸のみを迫られたのどは腫れ、看板政策を棚に上げた腕は痛み、すり寄りすぎた足がつる。政局の疲れをテキーラの一杯で癒やし、帰国後の政治決戦に備えている時分か▼党内には「増税談合」「自殺行為」といった批判が渦巻き、小沢グループなどの議員は造反を公言している。衆院で採決に持ち込めば党分裂、先送りなら政権立ち枯れのピンチとなる▼時の首相が野党と組んで、自党の仲間とやり合う。長い憲政でも珍事に違いない。もはや政党の体(てい)をなさず、取り繕う策も尽きた民主党は、割れるなら早いほうがいい。政治家個々の責任が問われる時局である▼責任と酒の重さを受け止めるバーテンの手は、もろもろを混ぜ合わせて未知の味を生む。この日本、政界再編のカクテルに酔う暇(いとま)はないのだが、それなしには前に進まない。消費増税に白黒をつけたら、「この指とまれ」をやり直し、政治の厚い皮をむく時だ。