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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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スウェーデンのストックホルムで開かれた100年前の五輪に日本は初参加した。マラソンの金栗四三は疲労困憊(こんぱい)して途中で倒れ、民家で介抱されるうちに行方不明扱いになった。時は流れて、当地の五輪委は55年目の祝賀行事に金栗を招く▼スタジアムでテープを切ると、「日本の金栗、ただいまゴールイン、タイムは54年と8カ月6日5時間32分20秒3。これをもって大会の全日程を終了します」とアナウンスが流れたそうだ。こんな話は理屈なしに頬がゆるむ▼さて、1991年のノーベル平和賞授賞式も、一昨日ようやく全式典を終えたことになろうか。自宅軟禁で出席できなかったミャンマーのアウンサンスーチー氏(66)が、21年の後にノルウェーで受賞演説に立った▼2年前には想像もできなかった軍政国家の変容である。スピーチで、平和をめざす人々を「救いの星に導かれる砂漠の旅人」と語った。砂漠に例えたのは、一歩一歩を黙々と歩むイメージだろうか。話し終えると拍手が鳴りやまなかったそうだ▼ノーベル平和賞は栄誉ながら悲痛を伴う。戦乱が激しく、虐げられた人が多いほど注目され、輝きを増す。氏の背後には恐怖で支配される民衆がいた。本人も万感胸に迫る演説だったろう▼金栗に話を戻せば、粋なはからいに「長い道中の間に孫が10人できました」と応えたそうだ。片やスーチー氏は英国人の夫を看取(みと)ることもできず喪(うしな)った。夫君が眠り、平和の祭典五輪の近づく英国を、このあと訪ねるという。