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朝日新聞の天声人語をもっと読む大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。
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占領時代に別れを告げる講和条約が結ばれた1951(昭和26)年、「逆コース」という言葉が流行語になった。東西冷戦を背景に、なし崩し的に再軍備が進められ、復古調の空気が世間に流布した。言葉には、「この道はいつか来た道」の意味合いがあったという▼時代も、起きている事も異なるが、大飯原発の再稼働に、古い言葉が思い浮かぶ。歌舞伎の舞台を見るような型通りの儀式をこなして、政府はきのう「最終判断」を下した▼つまり「安全神話」への逆コースに他ならない。都合の悪いことは知らんぷりで、体裁の整う事柄だけを甘くつないで「安全」をうたう。うそで化粧してきた産官学とは違い、だまされた側は忘れようもない▼繰り返しになるが、原発を知らなかったこと、知ろうとしなかったことを、大勢の人が誠実に悔いている。その上での脱原発依存の潮流を、「精神論」だと野田首相が言うのもいただけない。政と官の本性が、言葉の端からのぞいていないか▼「喧嘩(けんか)は片方にしか非がなければ長く続かない」という。喧嘩ではないが、国論を二分するようなテーマは双方に是と非が相混じるものだ。だが原発の場合、将来には無くす方向でおおむね意見は一致する。その中長期ビジョンさえ示さないままの再稼働は、国民への誠実を欠く▼とにかく、なし崩しは許されない。安全を言い張る稼働こそが、むしろ精神論だろう。それは自信から過信に姿を変えて、遠からず「いつか来た道」をたどり始める。